「克服すべきは、弱い自分の心」ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれた りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
克服すべきは、弱い自分の心
タイトルからもわかるとおり、昨年公開の『パトリオット・デイ』と同じく、2013年のボストンマラソンで起こった爆破テロに関係した映画です。
ボストンでローストチキンをつくる工場で働いているジェフ・ボーマン(ジェイク・ギレンホール)。
彼女のエリン(タチアナ・マスラニー)とは、つい先ごろ別れたばかり。
だが、その彼女がボストンマラソンに出場するのを知ったジェフは、応援幕をつくってゴール付近に赴いたところ、爆破テロに巻き込まれてしまう。
結果、彼は両脚とも膝から下を切断せざるを得ない状態となってしまうが、偶然にも爆破犯とすれ違っており、その証言が犯人逮捕に役だったことから、ジェフは一躍、ヒーローに祭り上げられてしまう・・・
といったところから始まる物語で、実話を基にしている。
大きな外傷とともにPTSDを負った青年が再生していくさまに焦点を当て、テロ撲滅、強いアメリカを顕示するというのが主題でないあたりは共感が持てます。
けれども、主人公も含め、彼を取り巻く家族(特に母親)や友人たちが、自己顕示欲は強いにもかかわらず卑下感も強く、さらには個の境遇を利用するだけしてやろう的な欲どおしい感があって、なかなか共感できない。
とはいえ、強権的な母親に頭が上がらず身勝手でダメダメな主人公が克服すべきは、テロによる被害よりも、自分がそもそも持っていた弱さだったという落としどころは、クリント・イーストウッド監督の最新作よりは、ずっと共感できるところではあるが。
主役のジェイク・ギレンホールは『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』に続いての繊細な演技で好演。