「心にいつも、一体の万能死体を」スイス・アーミー・マン ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
心にいつも、一体の万能死体を
クリックして本文を読む
本作は問いかける。人生とは、無人島で絶望しながら死を待つようなものなのか?と。この実験劇場に身を置く主人公が半ば諦めを持って死を決断したところ、思いがけず浜辺に打ち寄せられた身体を発見。この“死体”は死んでいるはずなのに、尻からガスは噴射するわ、口から岩清水を噴射するわと大活躍。やがて薄ら笑いを浮かべて、喋り始めたりもする。
両者の関係が面白い。片や生から死に向かおうとした者。片や死んでいる身体で精一杯に生を実感すべく方位磁針をキュルキュルと動かす者。二人は対極の存在なのだが、おそらく、いや絶対に、二人は互いに“もう一人の自分”として、繋がり合っているのだろう。彼らが心を重ねるに連れスクリーンに色彩が溢れ、イマジネーションが炸裂していく展開も楽しい。翻って最初の命題への答えだが、人は絶望しないためにも、心にいつも一体の死体を持つべきなのかもしれない。しかもとびきり生意気で万能なやつを。
コメントする