「小綺麗な良品だが、”ハクソ―・リッジ”の前菜ということで。」ブラッド・ファーザー Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
小綺麗な良品だが、”ハクソ―・リッジ”の前菜ということで。
超一流の映画人メル・ギブソンの"監督"としての代表作は、いずれも歴史的事実をリアルに描写する。アカデミー作品賞の「ブレイブ・ハート」(1995)や、キリストの受難と磔刑を映画化した「パッション」(2004)、そして今年のアカデミー賞(第89回)で、2部門を獲得した話題作「ハクソー・リッジ」(6月24日公開)もだ。
一方で"俳優"としては屈強なアクションを売りとする、やはり元祖「マッドマックス」(1979/1981/1985)である。本作は、そんなメル・ギブソンの、久々の"主演作品"。・・・本人は意識してはいないだろうが、実は"還暦記念"だったりする。
設定は単純明快。悪い奴らに狙われた実の娘を救うパパのヒーロー映画。"あるある"っぽいのは、つまり、リーアム・ニーソンの「96時間」シリーズ(2009/2013/2015)や、ブルース・ウィリスの「ダイ・ハード4.0」(2007)などを想起してしまうからだが、確信犯的なパロディセンスを持ち合わせているところが、チョイと違う。
先ずもって、主人公のダメダメっぷりは、メル・ギブソンの近年の私生活問題(DV、飲酒トラブル)かと思わせる自虐設定。元犯罪者で、アルコール依存症からのリハビリに取り組んでいる。そこに行方不明だった娘からの突然のヘルプコールである。娘の危なかっしさも、笑えたり・・・(ホントのプライベートは知るよしもない)。
これはリーアムとブルースの屈強さとは正反対の落ちぶれたパパで、それでも娘のために昔のツテに頼りながら、サバイバルしちゃう。
舞台設定がメキシコ国境近くの砂漠で、大型バイクに股がるメルの姿は、年老いた"マッドマックス"の復活劇だったりもする。まだまだ若造には負けないぞ!って感じで。
変にヒネってはいないし、娘を追う犯罪組織背景が、エンディングへの伏線になっていて、腑に落ちる。尺も90分くらいでちょうどいい。小綺麗なコンパクト良品。
この時期の公開って、やっぱり配給会社の「ハクソー・リッジ」の"前菜"なんだよね、たぶん。
(2017/6/7 /新宿武蔵野館/シネスコ/字幕:西村美須寿)