「権限は無いが、責任はある国王の苦悩」ヒトラーに屈しなかった国王 勝手な評論家さんの映画レビュー(感想・評価)
権限は無いが、責任はある国王の苦悩
事実を下にした作品。
第二次大戦初期、ナチス・ドイツがノルウェーに侵攻。戦力に勝るナチス・ドイツは、ノルウェー政府及びノルウェー国王に、ナチス・ドイツの要求に従うように求められるも拒否し、後にノルウェー国王はイギリスに亡命すると言うのは史実な訳ですが、この作品は、そのナチス・ドイツによるノルウェー侵攻のごく初期の3日間を描いた作品です。
この作品を見て、改めて思ったのは、“ノルウェーの歴史って、意外に短い”と言う事。スウェーデンとの同君連合を解消して、ノルウェーが独立国家として成立したのは1905年なんですよねぇ。実は、アメリカよりも、ずっと短い。それ以前にも、同君連合ではありますが、国家としては存在していましたけど、独立の国家では無かったわけですよねぇ。それ以前には、デンマークの支配を受けていたと言う時代もありますし。それらも史実な訳で、そう言う事があった事は認識していましたが、第二次大戦と言う大きな出来事を前にして改めて振り返ると、意外に最近なんだなぁと認識を新たにしました。今の国王陛下(映画の中では、ハーラル王子として登場)で、まだ3代目ですからねぇ。
劇中で、国王と衝突する事もある王太子のオーラヴは、国王に即位後、自らに護衛を付けないことについて「私には400万人のボディガードがいたからね」と述べた人物としても知られています。当時のノルウェーの人口は約400万人であったので、オーラヴ国王は、ノルウェー国民全員が護衛であると言ったことになります。
また、こちらも劇中で、デンマークが早々にナチス・ドイツに降伏してしまっていることが描かれていますが、本作のホーコン7世の兄である、デンマーク国王のクリスチャン10世は、デンマーク降伏後もデンマーク国内にとどまり、ナチス・ドイツに対して有形無形の抵抗をした事で知られています。
いやぁ、それにしても、立憲君主制で実権は無いとはいえ、非常事態には、なぜだか国民国家は、こう言う高貴な方に頼る訳で、そのプレッシャーたるや如何ばかりか。劇中でも、ドイツ公使の要求をはねつけるに際して、その苦しい思いを吐露していますね。この物語は、あくまでも映画で、ドキュメンタリーではありませんが、実際の国王もそのように思ったのでは無いでしょうかね?この国王が居たので、今のノルウェーが築かれたんだなと言う気がしました。