「より強いテーマにリメイク」IT イット “それ”が見えたら、終わり。 R41さんの映画レビュー(感想・評価)
より強いテーマにリメイク
リメイクされたIT
スティーブンキング作品には必ず隠しテーマがある。
前回のは友情ではなかったかと思う。
以前ではそれは隠しテーマだったが、今回の作品で友情は明確なテーマとして表現されていた。
また、この作品を第1章として描き、不足分が第2章となるのだろう。
つまり、成人した彼らの元に再びやってきたITだ。
さて、
ITとは何者だろうか?
恐怖を餌に生きる悪魔…
27年ごとに街で起きる子供の行方不明事件 他の場所より6倍も多い行方不明事件の数。
ビリーの弟ジョージ
作中最初の犠牲者だが、彼の恐怖とは何だったのだろう?
地下室というぼんやりとした恐ろしさ
彼にとって兄は尊敬する人でもあり、すぐ叱るので怖い存在でもあったのだろう。
登場人物は中学生の子供たち
ジョージには中学生の兄は、ビリーたちのいじめっ子のように少しばかり怖い存在だったのかもしれない。
子供たちのそれぞれの親
物語上そして視点が子供たちなのでデフォルメされているが、輪をかけたその存在と圧力を子供たちは日々恐怖として感じているのかもしれない。
ベンは街の歴史を調べるのが好きなことで、子供たちがITについて理解し始めるが、アメリカという近年できた国家に蔓延るこのような変な出来事は物語だけではなく、実際に起きていることで、アメリカ人にとってはこの物語がよりリアルに感じるのだろう。
ビリーはジョージの行方不明を過去のものにしないでどこかで生きていると考えていた。
しかし父はその彼の思いを激しく否定した。
十中八九無理という大人の思考は、純粋な心が残るビリーにはとても受け入れられるものではない。
そして、
彼らの集まりはまるでオズの魔法使いのようだ。
冒頭でジョージが排水溝に消えるが、そこには前後だけでも目撃者がいた。
おそらく目撃者は見たことを人には話していない。
このことはその街というのかアメリカ社会というのか、問題に関わらないようにする彼らの考え方を表現している。
ビリーの父のように何もなかったことにしてしまうのも似たような考え方かもしれない。
でも現実に起きていることがある。
子供の前だけに登場するペニーワイズ
「僕らにだけ見えるのなら、僕らが立ち向かう以外にない」
これが彼らの考えだったのだろう。
その一歩を踏み出す勇気
この勇気が化け物屋敷に入ったり、その中の井戸のに入ったりさせる。
「もう限界だ」
化け物屋敷から命からがら逃げえ出して来た彼らのセリフは当然だろう。
何故キングは子供たちにそれ以上のことを求めるのだろうか?
確かにこの物語には少年たちの大きな成長があった。
しかしそれはほんの少しでも間違えれば死んでしまっていただろう。
この際こそホラーなのだろうが、
その先へと進む彼らの勇気が恐怖を駆逐することで、視聴者の中にも勇気が芽生えてくるようだ。
この感情の変化を与えることこそキングの真骨頂なのかもしれない。
さて、、
彼らの体験は彼らが信じたものを貫くことで達成された成功事例を取得したこと。
彼らだけが心から理解した「この世界の真実」がある。
生まれて気づけばそこにいた親より、よくわからないフレーズで教え込まれる聖書より、学校での勉強やくだらない人との付き合いより、最後まで仲間を信じて、時に挫折があっても、自分自身が対峙したものは自分自身の中の恐怖であり、一緒に戦った仲間がいたというゆるぎない事実。
人は、彼らのように自分で掴み取ったものだけしか真実として受け入れることができないのかもしれない。
どんな聖人君子が言う言葉も、それには勝てない。
単に与えられたものの価値との違い。
この不動なる気づきこそが、この作品の新しい隠しテーマになっていた。と思った。
子供から大人へと変わる季節。
ある者は大人の言うことを聞き入れることを良しとする。
しかし彼らは自分が信じたことだけを信じることにしたのだろう。
それは子供の時にはっきりと見えていた心の方位磁針を失わないことであり、その中で築き上げたゆるぎない友情。
たった3ヶ月ほどの出来事。
そしてなぜか薄れゆく記憶
これは子供の見る夢と大人の現実を表現しているのだろうか?
まるで集団催眠にかかっていたかのようなセリフ
でも心に残った成長と絆の痕
お互いの血で誓い合う友情と再会
彼らに訪れた変化
引っ越し
そして新学期
あるワンシーンに貨物列車が描かれていた。
思い浮かぶ「スタンドバイミー」
あの映画もスティーブンキング作品と知って驚いた。
ホラーではないからだ。
しかしこの列車のシーンに隠されているものを見たように感じた。
スタンドバイミー
そこに描かれていたのが大人になった彼らだった。
当時の少年たちはそれぞれ成長したものの、決していい人生を送っているわけではなかった。
作家となった主人公は、かつて少年だった頃の体験をフィクションにして書いた。
書き上げた彼は最後の文面を読んで微笑む。
「12歳の時の友達のような友人を、その後持つことはなかった」
彼は何故微笑んだのだろうか?
この作品に描かれていたモンスターに気づいただろうか?
そのモンスターとは「時間」
12歳の自分たちは、時間というモンスターによって、こんな風に変わってしまった。
そしてこのITもまた、時間というモンスターという粉を振りかけながら、再び彼らを襲うのだろう。
くわばらくわばら