「伝えたいことを描けていない」IT イット “それ”が見えたら、終わり。 卵焼きさんの映画レビュー(感想・評価)
伝えたいことを描けていない
まず始めにホラー的な要素についてですが、過去の映画itのような心理的に追い詰められるようなものは全くありません。分かりやすい音楽が流れだし、予想通りにピエロやピエロが見せる怪物がおどかすだけです。ペニーワイズが初めにジョージの腕に噛み付いたときはガッカリしすぎて力が抜けました。
しかしこの映画で最も稚拙に感じたのは子供達の家庭環境、つまりはトラウマや恐怖にあたるパートの構成です。ルーザーズクラブのメンバー達の多くや学校の不良は、それぞれが家庭内暴力や歪んだ愛情を親から受けています。「それ」は子供達のトラウマや恐怖を利用して襲ってくるわけですから、まあこの映画には必要な存在といえます。問題はそういった子供達の身辺問題一つ一つをとって見た際に、何も脈絡がない、原因も分からない、何一つ根本的に解決しないで終わる、という視聴者おいてけぼり&舞台装置にしか見えない出来に仕上がっていることです。
一言でいって凄まじく安易です。子供が虐待されていればトラウマだよね?だからそれを使って怖がらせるね!本当にそれだけの為に考えたストーリーなんじゃないかってくらいの薄さです。子供達が助け合いトラウマを克服=「それ」に打ち勝つという流れなんでしょうがそれが全く伝わってこない。必然的にルーザーズクラブの友情や結束もペラペラに感じてしまい、見ている方は「なんで?」という気持ちです。監督が作りたかったシーンはなんとなく分かりますが、登場人物がそれを作るだけの部品に成り下がってしまっているような印象を受けました。
不良の少年がいきなり父親を殺したときは、あまりに適当過ぎて少年の役割に同情してしまいました。