「逃げたい少年に、ベビーグルート系怪物が、ホントのことをぶっちゃける」怪物はささやく Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
逃げたい少年に、ベビーグルート系怪物が、ホントのことをぶっちゃける
まさに今年、スペインのアカデミー賞と言われるゴヤ賞で最優秀監督賞ほか9部門を受賞したファンタジー映画だ。見終わって、少し経ってからの方がじわじわくる。
画面ヅラは、VFXによる"イチイの木"の怪物が現れるファンタジーだけれど、"死"と向き合うという子供にとって重いテーマを扱う、悪夢な映画である。
原作小説は、英国人作家パトリック・ネスによる児童小説。2012年の英国児童文学最高峰の"カーネギー賞"(The Carnegie Medal)と、最も優れた絵本の画家を表彰する"ケイト・グリーナウェイ賞"(Kate Greenaway Medal)を同時受賞した傑作。絵本というより、コワい挿し絵の、スゴい児童小説というべきか?
教会の墓地が見える家で、難病の母と2人で暮らす少年コナー。離れて暮らす祖母と、離別した父がいる。ある晩、墓地に立つ"イチイの木"が怪物となって現れる。
怪物は、これから3つの"真実の物語"を語ること、そして4つ目の物語は、コナー自身が嘘偽りのない"真実"を語るように告げる。怪物は、少年コナーの悪夢なわけだが、嫌がるコナーをよそに、毎晩同じ時間に現れ、ひとつずつ話を聞かせていく。
現実の世界では、大人たちは、子供のコナーに気を使ってほんとうのことを言ってくれない。重い病気の母との別れが迫っていることぐらいコナーだってわかっているのに。そして実は、身近な"死"を受け入れていく術を、怪物は諭していくのだ。
クライマックスで、コナーが覚悟を決める、第4の話が切ない。"死"を本当に恐れているのは、"死"を受け止められないことなのではないか。児童小説の問いかけとしては、とても斬新だ(オトナでもキビシイ)。
主人公のコナーを演じるのは、ルイス・マクドゥーガル。「PAN ネバーランド、夢のはじまり」(2015)に出ていたというが、脇役なので憶えていない。しかし家族の配役はすごい。母親がフェリシティ・ジョーンズ(ローグ・ワンのヒロイン)、祖母がシガニー・ウィーバーだ。そして、"イチイの木"の怪物に、リーアム・ニーソンがモーションキャプチャーで参加している。声優だけではないので、顔がそのまんま(笑)!
今年は、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス」(2017)でも、"ベビー・グルート"が大ウケしているが、"樹木系キャラ"が流行りか。
(2017/6/11 /TOHOシネマズみゆき座/シネスコ/字幕:藤澤睦美)