「.」ジェーン・ドウの解剖 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
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自宅にて鑑賞。グロい描写タップリで観る者を選ぶ。以前にも『バタリアン('85)』等で登場していたが、本作では検視官が前面に立つ風変わりな設定で、舞台もほぼ遺体安置所のみとなっている。外界との折衝は古びたトランジスタラジオのみと云うのも巧い。ただ全体に説明不足な感は否めず、ストーリーも中途半端な印象で、作り手自身、物語が見えてないのではないか。カットの切り替えしが多用されており、判り辛いシーンもあった。怖がらせ方も淡白で、単調に思えた。ユニークな設定が活かしきれておらず、どうにも歯痒い惜しい一本。60/100点。
・不気味で不快感が伴う世界観が画面から伝わってきた。もっぱら解剖シーンの描写だけで云うと邦画の『らせん('98)』を思わせ、『ソウ3('06)』、『ソウ4('07)』程には迫っていない。
・登場人物が至って少なく、舞台も限られてはいるが、もう少し膨らませられる様にも思えるので、もうあと一工夫が欲しかった。M.マケルハットンの“バーク保安官”や、或いは現場検証、運搬に関った人物等、他の関係者には害が及ばないのも物足りなさが附き纏う原因の一つで、結局彼女が誰をどうしたかったのか判らない。
・そもそも"Jane Doe"とは、アイデンティティが不明な女性の仮称で"Jane Roe"とも呼ばれる。男性の場合は、『セブン('95)』でも使われた"John Doe"亦は"John Roe"、"Richard Roe"であり、子供には"Johnny Doe"、或いは"Janie Doe"が用いられる。複数の場合は"John Does"、"Jane Does"となり、映画界では『ジョンQ -最後の決断-('02)』でタイトルロールにもなった"John Q. Public"や架空の監督"Alan Smithee"等が挙げられる。差し詰め我国で云う処の、名無しの権兵衛や臥竜、烏有先生、名の知れぬ者、アノニム等がこれに当たる。
・少ない出番乍ら、“エマ”のO.ラヴィボンドがキュートに映っていた。核となるO.ケリー演じる“ジェーン・ドウ”だが、突然起き上がったり、喋り出したりと云ったよくある展開が無く、終始、何等かの自発的、或いは能動的な動きを一切排除し、瞬きすらさせなかったのが佳かった。胸の切開後、口を閉じられてからの表情がより人形っぽく見え、不気味だった。
・“トミー・ティルデン”のB.コックスは流石の存在感とナチュラルな演技を披露したが、この役は当初予定されていたM.シーンがスケジュールが合わず、B.コックスとなった。ラストのスタッフロールで"the filmmakers wish to thank"欄の最下段最終行には、監督の前作『トロール・ハンター('10)』からと思われる"Troll"がクレジットされている。
・鑑賞日:2017年12月15日(金)