「米林監督の自立の決意を感じる作品」メアリと魔女の花 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
米林監督の自立の決意を感じる作品
“魔女ふたたび”というキャッチフレーズから、名作・魔女の宅急便を継承した作品だと予想していたが、全く違ったテーマの作品だった。本作は、ふとした切欠で魔法の力を身に着けてしまった少女が、魔法の力に戸惑いながら、多くに人に助けられながら、自らの力、意志で生きていくことを決意するまでを描いている。
本作の主人公は、好奇心旺盛な少女メアリ(杉咲花)。主人公は、森に入って見つけた魔法の国から盗みだされた魔法の花(夜間飛行)の力で一夜限りの魔法使いになってしまう。そして、主人公は、魔法の箒で空を飛んでいた時に、偶然、天空にある魔法大学に侵入し新入生に間違われ、大学の邪悪な魔法使い達に、魔法の花の存在を知られてしまう。邪悪な魔法に満身創痍になりながらも、主人公は必死に魔法の花を守っていくが・・・。
本作は、随所にジブリ作を彷彿とさせるシーンが散りばめられている。主人公の箒をつかった滑空シーンは、魔女の宅急便に比べ、若々しく、迫力も増しているが、ここはジブリ作がもっとも得意としていた空中シーンでもある。国籍不明であるが、自然豊かな風景、のどかな人々の佇まいも、ジブリ作品の特徴である。このように、本作は、米林監督のジブリ愛に溢れているが、エンドロールに感謝の項目があり、宮崎駿監督、高畑勲監督の名前が記載されていたことから、ジブリへの感謝と惜別の意識も感じられる。
しかし、本作は、ただそれだけの作品ではない。本作で際立っているのは、後半で、大切な友達ピーター(神木竜之介)を助けるという主人公の強い決意を秘めた鋭い眼差し。そして、ラストで、魔法に頼らず、これからは自分の力で生きていこうと決意するシーンである。魔女の宅急便が成長物語だったのに対して、本作のテーマは自立である。更に言うなら、後半、ラストでの主人公の自立の決意は、米林監督自身の投影であり、米林監督のジブリ色からの自立を強く感じる。
米林監督の真価が問われる次回作を心して待ちたい。ジブリから旅立った米林監督が何処に着地するのか見極めたい。そして、ジブリの時と同様に、着地点から生み出されることが期待できる良作を観続けていきたい。