「オマージュは要らない。新しいものが見たい。」メアリと魔女の花 タロッサさんの映画レビュー(感想・評価)
オマージュは要らない。新しいものが見たい。
キャッチフレーズからそうですが、
魔女の宅急便を意識していることが明言されていたので、
そういうつもりで観ました。
マーニーが面白かったので、米林監督への期待もありました。
感想を先に言うと、
魔女の宅急便うんぬんは置いておいても、単純に作品としてつまらない。
宮崎アニメ黄金期の金字塔(同時に久石譲最高傑作)の一つにちょっかいを出すこと自体が間違いです。足元にも及ばないし、比較すらできないくらい豆粒です。
スタジオポノックが潰れないか心配になりました。
序盤からダラダラとした展開が続き、
「盛り上がらないなぁ」と感じたまま、
ありきたりなシーンが連続して、
興奮なり情緒なりが一切無く、こじんまり・がらんとした世界に寂しさを感じていたら、
終わった。
「2時間の苦痛……」、そんな映画でした。
快楽、喜び、ゼロ。
たぶん宮﨑氏の原点はパンダコパンダにあって、あんなふうに赤ちゃんでも喜ぶような根本的な快楽の法則を研究しまくって作品を練り上げている人なんだと思います。魔女の宅急便の大ヒットまで、赤字ばかりでも情熱は消えるどころか煮えたぎっていた。
米林氏は、温室育ちの天然さんなのでしょう、冒険活劇への研究が全然足らない。アクションとなると人物も構成も下手すぎです。
でも、わざわざ激しくしなくてもいい。文学的な静かな世界を描くのは上手いんだから、そっちで勝負してほしかった。
そもそもジブリのカムバックって、世間は求めているのでしょうか?
現在は細田監督も新海監督も、片渕監督さえ居るんだから、ジブリは過去作品で充分だと個人的には思います。
なんでスタジオ新設したのにまだジブリに呪縛されてる。大人の事情? そんなものに左右されて情けない。
『ハウル』製作途中に監督を降ろされ、ジブリをクビになってノイローゼになり、それでも諦められずに細々と始めた『時をかける少女』で下克上を果たした細田監督。
魔女の宅急便の監督を降ろされ、『この世界の片隅に』まで27年も地を這うような活動を続けて、56歳でやっと花が咲いた片淵監督。
両者を見習ってほしい。
はっきり言います。
米林さんは天才ではないです。
ただ、抽象文学を描く才能は感じますので、それを突き詰めた先に、前のめりに倒れてほしいです。
これも大人の事情だったのかも知れませんが、フカイノツワリが大嫌いなので、こんなのを主題歌にもってきたのも大失敗だったと思います。
アンチが多いのを知らないのでしょうか?
どうせ世界の終わりだったらミッシェル・ガン・エレファントを主題歌にすれば映画の評価はひっくり返った。