「要するに最後のセリフ」夜は短し歩けよ乙女 ぱんだまるさんの映画レビュー(感想・評価)
要するに最後のセリフ
原作は読んでいるが相当前のことであるので観ながらこんな場面あったなぁと懐かしさも感じつつの視聴。
ただ、こうも前衛的な内容であったかと驚きもあった。点と点のつながりが線になっていかないという。点が終わればすぱっと次の点と、目まぐるしく流れる劇画的時間。状況とセリフが押し寄せる。
これで作品の吸引力が途切れないというのは中村さんの絵の魅力とカラフルな演出の妙だろう。
終盤の先輩の「こじらせ」の見せ方で映像としては必要なのはわかるがだいぶしらけてしまったのだが、最後のカフェに向かう乙女とそこで待つ先輩のお互いに対する純な想い(最近こうストレートな相手に対するワクワク感溢れる子どもらしさを伴った想い[褒めてます]は映像作品では出てこない)、そこから最後の例のごとく大変有名な「セリフ」まで見ればそれはもうお話としてはプラス方向に絶対に成立してしまう。
要はみんなこの最後のセリフを聞きに来ているのだから当然と言えば当然なのだが。
最後に。森見登美彦の作品は、作品の内容自体がおもしろい、というよりは彼の文体とその語り口にこそ魅力があるのだと再認識した。映像もいいが、彼の作品は他のどの作家よりも文章で味わうべきである。
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