「レイプシーン多い:違和感は偏見に基づくもの。」エル ELLE だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
レイプシーン多い:違和感は偏見に基づくもの。
ELLEとはフランス語で彼女という意味。英語で言うところのSHE。
経営者でも母でも恋人でも被害者でも淫蕩でもない、ただの彼女=ELLE=SHE=ミシェルだ、という事なんでしょう。
レイプシーンが多いので、見ていてうんざりします。会社でばら撒かれたミシェルの顔が張られたエロ動画も気味が悪いです。
ミシェルがことさらに被害を騒がない事にびっくりしましたが、それは「レイプ被害者は被害者らしくめそめそするものだ」という偏見がもたらすものだ、という評をどこかで読みかじり、ドキッとしました。
そうだ、そうだね、私の見方は、私が蓄えてきた偏見だよね、と思いました。
ネコにも優しくない、母親も好きじゃない、息子はバカだけどかわいい、息子の彼女はうざい。
元夫の彼女にはちょっとした意地悪をする、職場の部下にもそんなに好かれていない。
自分で犯人を探す、隣の家の夫がかわいくて自慰のネタにつかう、友人の夫と適当にセックスもする。
隣の家の夫を机の下で誘う。どうやら隣の家の夫がレイプ魔。レイプはごめん被りたいけどかわいい男とは味わいたい。
ミシェルってそんな人かな、と思いました。私が思った限りではの話です。
自分との共通点は少ないけど(バカ息子への塩対応と元夫の恋人への意地悪とか、元夫の車をぼこぼこにしたのとかはめちゃ面白かったですが)、かっこいいなと思いました。でも私はたとえ隣人がどんなに美味しそうでも、その妻がいる食卓の下でまさぐりあうとか、レイプ被害にあったのに平静を装えないと思います。
車の事故のときも隣人を呼んでたし、こわくないの?大丈夫ってなっていました。
ミシェルのそういう人に迎合しない性質は、父親が凶悪犯となり、その娘としてマスコミ・警察・世間の論調に傷つけられたためと読み取りました。加害者の娘らしくおとなしくしろとか、あんたも被害者ならば被害者らしくしろとかっていう圧力でしょうか。
幼いミシェルが下着姿でカメラをにらみつけたまま芝生に屹立する映像がありましたが、そこからは私が考える被害者らしさは見えない。
だからといって彼女がどう思っていたかは、決められないのだけれど、注意深く見つめない限り、パッと見た印象から自分の偏見において判断してしまう。そういう人の性を彼女は憎んでいるのかもなと思いました。
成人した息子がいる女の性的欲求を否定的に評することは、それを思った人が、女の性は若い人だけの特権で老いた人の性は受け入れられないという偏見の持ち主である、という事があらわされただけです。
レイプ被害の後でも性的欲求を持っている事を否定的に評する事は、それを思った人が、レイプ被害者はめそめそくよくよして、性欲など失せてしまうはずだという偏見の持ち主である、という事があらわされただけです。これは私のことですが。
人は偏見をもたずには生きられまいよとも思うので、そのことに自覚的であればまだまし?って感じです。
傷つけ傷つけられ生きるしかないのさ、なんて悲しい気持ちになりました。