「“活動写真”を観る喜び」マッドマックス 怒りのデス・ロード ブラック&クロームエディション ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)
“活動写真”を観る喜び
マッド・マックスは実にストイックな映画だ。2015年にこの映画のレビューを書いた時に“無駄がない”作品として評したのだが、そこから更に色彩を減量させてくるとは恐れ入った。体脂肪率は優に5%を切っていると言って良いだろう。
色を欠くことで、情報量は削がれたはずなのに、そこに映る人の表情、車の動き、荒廃した世界の陰影は明確な輪郭を帯び、それぞれの存在感をより際立たせている。とりわけ、夜のシーンの美しさと緊張感は圧倒的にオリジナルを凌駕している。言わずもがな、これは画の撮り方が極度に鍛錬されているからこそ為せる技。なるほど、かつて映画が活動写真と呼ばれた所以が分かったような気がする。映画を見ているはずなのに、一瞬一瞬をスチル写真として眺めていたくなるようなその構図の巧さにただただ、圧倒されてしまうのだ。
この作品がなぜこれほどまでに高い評価を受けたのかが分からないという人にこそ、このバージョンを見てもらいたい。単純に物語の好き嫌いだけでは映画は評価できないということを“活動写真”を観る喜びと共に実感してもらえることだろう。
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