劇場公開日 2017年3月3日

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「静かなる愛に染み入る。」ラビング 愛という名前のふたり 幸ぴこリンさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5静かなる愛に染み入る。

2017年10月11日
iPhoneアプリから投稿

異人種間結婚が法律違反と知りながら、
周りの反対を押し切って州の裏をかいてD.Cで結婚!という積極的な行いではなく、ただ2人一緒にいたいだけ…ひっそりと家族になりたいだけ という静かなる愛による行い。
ヴァージニアに戻った2人はすぐに逮捕され引き離されるが、妻ミルドレッドの手紙による訴えをきっかけに5年後に上訴の動きを取り始める。けど夫は何だか全然乗り気じゃないし、妻も夫に従うスタイルを貫き通して最高裁にも現れない。
この2人は歴史を、法を変える史実に巻き込まれた立場であり決して自らと周囲を救う為に立ち上がったヒーローではなかった事が感じ取れた。
描かれる2人の、事の流れに身を任せながらも不安を感じ、常に警戒心を抱いている素ぶりがとても切ない。ジョエル・エドガートン演じる夫が心身疲弊して妻の前で泣いちゃうシーン、こちらまで貰い泣きしそうになる。敏腕弁護士から判事に伝えたい事を尋ねられ、妻を愛していると答えたシーン。愛を口に出さなかった硬派な彼だからこそ、めちゃくちゃ重みがあった。ラストも記者に囲まれる中、殆ど言葉も出ずにひたすら妻を抱きしめる姿。そばにいたいという密やかな願いがようやく世界に受け入れられたのだという事がよく分かるエンディング。

ジョエル・エドガートンの硬派で物静かな夫像の自然体さに感動。また、ヴァージニア州の田舎の静かに流れる自然の景色による映像美が素晴らしい映画だった。

幸ぴこ