「静かなる社会派映画が示す現・アメリカ」ラビング 愛という名前のふたり MPさんの映画レビュー(感想・評価)
静かなる社会派映画が示す現・アメリカ
ただ愛故に結ばれたかった2人なのに、異人種間婚姻を認めないかつての法律によって行く手を阻まれる。しかし、その理不尽に対して、流れに身を任せるようにあるべき岸辺へと運ばれて行く夫婦の、なんと寡黙にして自然体であることか!?途中で手を差し伸べる人権団体や後押しするメディアの喧噪すら遠くの出来事のようだ。この静かなる社会派映画の有り様は、「ムーンライト」にも共通する新たな潮流かも知れないと、愛し合う夫婦の見つめ合う眼差しに引き込まれながら漠然と感じていた。もはや、あからさまな暴力や絶叫に近い抵抗の声を描く作品は、分断されたアメリカでは有効ではないのかも知れない。映画の新境地を感じさせる1作だ。
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