「ちぐはぐ」打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? らっしーさんの映画レビュー(感想・評価)
ちぐはぐ
シナリオ★★★★☆
音楽 ★★★★☆
絵 ★★★★★
演出 ★★★★★
構成 ★☆☆☆☆
演技 ★☆☆☆☆
総合 ★★☆☆☆
王道の日常SFストーリーに素晴らしい演出、音楽を付けたのに構成と声優の演技がひどいせいでちぐはぐになってしまった残念な作品。
シナリオはよくあるループもので、失敗する度に主人公が特殊な球を使って選択肢の部分まで時間を戻して過去をやり直していくというもの。ただしやり直した世界はあくまでifの世界であり現実世界とは異なるというのがミソ。…そう、ミソにならないといけないのに、なってないのがこの映画が失敗した一つの原因なのは間違いない。ラストシーンでifの世界の欠片が散らばり、主人公やヒロインがその欠片を覗き込むシーンがある。駆け落ちが成功した世界を覗いた彼らは、それがifの世界でしかないことを知っている彼らは、そして自分達が今いるこの世界さえifの世界にすぎないことをも知っている彼らは、一体何を思ったのか。
この作品は、最も重要なそこを描かずに逃げた。こんな平坦な物語に、カタルシスなしの落とし所なんてなかったのに。
例えば、【ifの世界は消えて登校日の朝に時間は戻る。プールで、主人公が友達に「俺は今日、ヒロインに告る!」と宣言する】
この程度の在り来たりなエンディングでさえ、本作の終わり方より数倍マシだったのに。中学生の駆け落ちが成功するシナリオなんて最初から期待していない。それがひとときの夢であれifの世界から学んだことを現実でどう生かすのか。せめて少年の成長を描いてエンディングを迎えたなら、ここまでの酷評はなかったように思う。
また構成として、"やり直し"の部分があまり効果的に使われておらず、中盤の間延びがひどいのもマイナスだった。ループものの弱点として「次にどんなイベントが起きるか視聴者が知ってしまっている」ことがあるが、本作はその部分を上手く解決できていない。これはシナリオの問題ではなく構成の問題だろう。
ということで、演出など光る点も多かったのに不出来な部分も多く名作とは呼べない出来に仕上がってしまった不遇の作品である。