「【モノクロームの世界で、反フェミニスト思想の男が起こした事と、生き残った学生のトラウマをドキュメンタリータッチで描く。尋常でない緊張と、モノクロの画が印象的な哀しき作品。】」静かなる叫び NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【モノクロームの世界で、反フェミニスト思想の男が起こした事と、生き残った学生のトラウマをドキュメンタリータッチで描く。尋常でない緊張と、モノクロの画が印象的な哀しき作品。】
ー ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が、カナダを拠点に創作活動をしていた時代の作品である。
哀しき作品であるが、何故かモノクロームの映像(特に後半の誰もいない通路のシーン。)が印象的である。ー
◆感想<Caution !内容に触れています。>
・反フェミニスト思想の若き男が、思いつめた表情で、呟くモノローグが恐ろしいが、何故、彼がそのような思想により、凶行に走ったのかは描かれていない。
監督は、敢えて描かなかったのだろうと推測する。
何故なら、同じ思想を持つ模倣犯が出てくる可能性があるからだ。
・それにより、この作品はモンスターと化した、女性をターゲットにした犯人の理不尽な凶行の恐ろしさを倍加させている。
・劇中、凶行前に学内に掲げられたピカソの「ゲルニカ」が映しだされ、男子学生フランソワがその前に佇むワンショットが、その後の凶行を予想させる。
・哀しいのは、犯人が教師室に乱入し、男女を分け、犯人から男は出ていけと言われた際に、フランソワが躊躇いながら部屋を出て、学内で負傷した女学生たちを助けながら、再び教室に戻り、多数の女学生の死体を目にし嗚咽する姿と、その後、雪の中、母親に会いに行き、強く抱きしめた後、排ガス自殺をするシーンである。
- 正義感溢れる彼の行動と、それ故に同級生の女性を助けられなかった悔いから、衝動的に自ら命を絶ったのだろうか・・。-
<辛うじて生き残った女学生ヴァレリーが新たな道を進む姿に、辛うじて救われた気持ちになる。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が静かなトーンで、狂気的思想に取付かれた男の凶行を激しい怒りを抑制して製作した作品。
エンドロールで事件で亡くなった女子学生たちの名前が流れるシーンは哀しい。
何故に、銃乱射事件は亡くならないのか、何故に、ある種の人達は思い込みで罪なき人々を巻き込んで、命を絶つのか。
どうしても、分からない・・。
映画としては、モノクロームの抑制した映像の使い方に、後年のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の映像センスの萌芽を感じさせる作品である。>