「人種、ジェンダー、マッチョ幻想」ムーンライト ローチさんの映画レビュー(感想・評価)
人種、ジェンダー、マッチョ幻想
黒人差別を扱った作品は数多くあれど、黒人コミュニティのなかの男らしさを強要するようなジェンダー差別に切り込んだ作品は、滅多にない。弱い者たちが夕暮れ、さらに弱いものを叩く。差別の被害者たちもどこかで別の対象を差別している。
本作は、人種的マイノリティの中のさらにジェンダー的にマイノリティの主人公が受ける何重もの苦難を描きながら、美しい恋愛映画でもある。
黒人男性社会のなかのマッチョ幻想はかくも息苦しい。ゲイでひ弱な主人公は、大人になるとマッチョの鎧を着込み、「いかにも」な外見になっている。そうして鎧をまとっていなければ生きられないコミュニティなのだ。
そんな彼が鎧を脱げるのは愛する相手の前でのみ。金歯のグリルを外すシーンが象徴的だ。
人種差別だけではなく、同性愛差別、そして男性社会のマッチョ幻想の抑圧をも描き、愛することの素晴らしさを説く。人が寛容になるために必要なものはなんだろうか。
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