「月の光に導かれ 何度も巡り会う」ムーンライト 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
月の光に導かれ 何度も巡り会う
サプライズ!本年度アカデミー賞作品賞受賞!
例の珍事は今となっちゃ酒の肴にぴったりだが、その珍事が起こらず滞りなく本作が受賞しててもサプライズであった事は確か。
アメリカ黒人社会。
主人公シャロンの少年期、青年期、成人期。
貧困、イジメ、同性愛…。
バリー・ジェンキンスの卓越した繊細な心情描写、自身のアイデンティティ。
素晴らしい映像美…いや、映像処理美。
シャロンを演じた3人、ヤク中の母親ナオミ・ハリスの熱演、何より本作で助演男優賞を受賞したマハーシャラ・アリは出番は僅かだが一際存在感と圧倒的なカッコよさを誇る。
ヒューマン・ドラマとしては紛れもなき秀作。
黒人社会全体のテーマ性と言うより、あくまで一個人の物語。
予想に反しての儚く美しい愛の物語で、辛く苦しい生きる中にも、月光のように一筋照らし出す優しさ。
…ただ、感性の問題。
日本人から見て…ではなく、一個人から見て、共感出来るか、否か。
イジメのシーンなどは見ててかなりどんよりさせられる。
特に大きな展開が起きる訳でもなく、淡々と静か。
ラストもあっさり、意外と呆気ない。
後、本作って、男性版『プレシャス』…と思うのは自分だけ?
その『プレシャス』もアメリカでの絶賛とは裏腹に、自分的には…。
『ラ・ラ・ランド』の方が相応しかった…とは言わないが、『ラ・ラ・ランド』の方が自分の好み。
人種差別って訳じゃなく、自分には合わなかった。
同じく人種問題を扱った作品賞『それでも夜は明ける』は胸打たれたのだが…。
作品賞受賞は様々な憶測出来るが、一番は、アカデミーの内輪だけの事情って気がする…。