「こんなにも純粋な愛を、私は知らない…。」ムーンライト ガーコさんの映画レビュー(感想・評価)
こんなにも純粋な愛を、私は知らない…。
「自分の道は自分で決めろよ」
親しくしてくれる、父親代わりの男性に言われた言葉を胸に秘め、生きる一人の青年。
しかし、自分が黒人であり、ゲイであり、家族が麻薬中毒者である現実を受け入れられず、苦しい日々を送っていました。
そんな、辛い気持ちばかりが胸を覆う中、彼の心を救ってくれたのが、同級生のケヴィンでした。
青年になり、同級生にからかわれ、いじめられても、それでも彼は常にシャロンを気遣ってくれたのです。
しかし、二人の中がうまくいくことを祈っていた矢先に、事件は起きてしまいました…。
いじめっ子の暴挙に耐えられなくなったシャロンは、彼らを反撃して警察に逮捕されてしまうのです。
家族ともケヴィンとも離れ離れになってしまったシャロン…。
時だけが虚しくどんどん前へ進んで行きます。
それから十数年後に、再会を話したシャロンとケヴィン。
筋肉ムキムキの金歯マッチョ売人に姿を変え、ケヴィンの前に現れたその変貌ぶりに驚きました!
金も権力も手に入れ、悠々と歩く姿に昔の面影はありません…。
しかし、愛するケヴィンを求めるシャロンの気持ちは、昔と変わらずに存在し続けていたのです。
時が経ち環境が変わっても、心の根底にある部分は何も変わってはいなかったことを思い知らされました。
「変わってしまったもの、変わっていなかったもの」それぞれの核となる部分が、形となって今の彼の姿へ投影させたかのようでした。
ケヴィンへの愛を封じ込めずに、自分の生きる道を見つけられたシャロン。
彼を愛する気持ちを手にした時、自分を愛する事も出来たのだとしたら、それはなんて幸福なのでしょう。
「誰が為に生きるのか」
「誰を愛していくのか」
その答えを見つけられたシャロンの人生が、この先もずっと幸福であることを祈るばかりです。