「君はそれでも宇宙人か⁉︎」散歩する侵略者 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
君はそれでも宇宙人か⁉︎
数日間行方不明だった夫が帰ってきた。
ただし、何か言動がおかしい。人間らしさがない。
街で起きた一家バラバラ殺人事件。
ジャーナリストの桜井は、事件現場に現れた謎の少年と事件の鍵を握る少女を探す。
人々は心を失っていき、政府は秘密裏にその何かに立ち向かう。
宇宙人の地球侵略が始まった。
黒沢清版E.T.(ちゃんと観たことないけど)。
不気味な宇宙人侵略に人間が立ち向かおうとする話かと思えば、まさかのハートフル映画だった。
全く新しい宇宙人の地球侵略方法。
全くというのは嘘かもしれないけれど、この映画にはUFOもグレイも出てこない。
形は無くウイルスとして寄主となる人間に侵入、その体を自分のものとして、1人だけ人間のガイドをつける。
多くの他人から概念を奪うが、ガイドからは奪わない。
人間は言語を使用して物事をやりとりするが、もしも、その言語で表される“もの”の核となる概念を喪失したら…
よくある宇宙人が目から光線飛ばしてくるのも、実は概念を奪う行為だったりして。
奪われた人間たちの無力なこと。
でも、愛だけは違った。
無だった宇宙人が愛を持ってしまったら。
はじめは人間サイドだった両ガイドが、最後には宇宙人サイドと心のつながりを見せるのには感動。
気づけば彼らの侵略を応援している自分がいた。
豪華俳優陣と恒松祐里、高杉真宙、光石研といったら私のためのキャスト。
加瀬夫婦と桜井率いる3人という2つの世界で進んでいく話。
メインは加瀬夫婦だが、どちらかと言えば桜井パートの方が長め。
松田龍平は無の芝居が似合いすぎだし、長澤まさみはラブホのシーンなど流石としか言いようがない。
グラサン長谷川博己のセリフは何故か毎回笑ってしまった。
豪華俳優陣の無駄遣いの中、冒頭の血まみれ恒松祐里のバカカッコ良さと脳内お花畑の光石研の可愛さは特に印象的。
それだけでも観る価値あるんじゃないかという。
人との関係が希薄となる今、自分は空っぽになっていないだろうか。
もう一度自分自身と向き合い、言葉の有り難さを噛み締め、人との交流を絶やしてはならないと宇宙人は教えてくれた。
最後はやや蛇足に感じたが、全体としてしっかりとまとまった映画だった。