「「○○とは何か?」」散歩する侵略者 Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
「○○とは何か?」
宇宙人が地球のことを学ぶときに「概念」を奪うのね。そうすると奪われた人は、その概念を喪失しちゃうの。
「家族」の概念を奪われると家族と他人行儀になるし、「所有」を奪われると「もう戦争なんてしなくて大丈夫」となり、「仕事」を奪われると子供に戻って、「敵」を奪われると「みんな友達だよね」になるの。
これって「○○とは何か?」に答えてるんだよね。「○○とは何か?」っていうのは哲学だから、哲学的問に脚本家は答えてんの。「どうやって答えるのかな?」って観てる途中から興味はそこに集中したな。
こういう話をうまく捌く黒沢清監督はすげえなあ、意識して他の作品も観てみよと思った。
役者さんはみんな演技いいのね。長澤まさみは特に表情だけで全部伝えてくるからすごい。長谷川博己は予告編では「なにこの下手な演技?」と思ったけどそういう役なのね。
恒松祐里は予想通り良かったなあ。悪者の役だけじゃなく、正統派ヒロインとかもやらないかな。前田敦子も「いいかも」と思ったよ。
ストーリーの中で、長谷川博己が最後に人類裏切んだけど、あれって「俺は誰にも必要とされてない!」ってのが前フリにないとだよね。そんな自分が宇宙人には必要とされたから「俺が必要なんだろ」って裏切るんでしょ。
長澤まさみが松田龍平を抱きしめて「私はこれで十分だから」ってやるところは「人類が滅びてもあなたがいればいい」ってことで、良かったなあ。
そこから最後に「愛」を奪いにいくけど、「愛とは何か?」は明確に答え出せてないんだよね。奪われた瞬間とその後の長澤まさみから想像するんだけど、ここは前川知大といえども含みのない答えは出せないんだろうなと思った。
話は面白いし、役者さんみんな達者だし、演出も面白いから、観た方が良いよ。