劇場公開日 2017年11月3日

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「ぜんぜん面白かった」氷菓 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ぜんぜん面白かった

2020年7月11日
PCから投稿

ちなみに私はこれを先に見ました。後になってアニメ版の氷菓も見ました。
とくにアニメ好きではありません。ただ宮崎駿や新海誠や押井守や細田守など著名なアニメーターのネームバリューにつられてアニメを見ることはあります。ゆえに映画の単位になっていないアニメを見ることは殆どありません。

面白く見ました。びっくりするほど面白かったのです。よく出来た話(原作)にとても感心しました。
観た後、大手映画レビューサイトの氷菓評に、動揺しました。私は偏向な鑑賞眼の持ち主ではないので、一部を除けば、世評と自己評が、そうそう違ってくることがないからです。だから、アニメを踏まえた評価なのかと思って、この映画の低評価の原因を探る目的で、アニメ版氷菓も観たのでした。

それでもこの映画はいいと思いました。私は広瀬アリスは妹より好きなのですが、山崎賢人がぜんぜん好きじゃありません。それでもアニメよりこっちのがよかったのです。
アニメを先に見ていたらどうだったろう、とは考えましたが、基本的に絵の女の子に、生身に代替するシンパシーを感じません。
あらためて人の好みってバラバラだなあ、と当たり前のことを認識したのでした。

ただし、この実写版が面白かった原因が、アニメ版氷菓にあることは、私にもよく解りました。
アニメ版氷菓は、あの京都アニメーションの丹念な仕事に裏打ちされているものです。すなわち、豊富な絵コンテが出来上がっているようなものです。実写版はアニメ版の一話から五話までの、尺と配置と展開をほぼ踏襲しており、むしろ、これで遣り損なうことのほうが難しいと言えるリテイクになっていました。

つまり、この映画がリメイクでなくリテイクと言えるような作業だった(はず)なのは、京都アニメーションの細やかな仕事のおかげ、だと思ったのです。

とはいえ、実写版にも独自性はありました。
安里麻里監督は見事なほどホラー一色の来歴で、とくに芳しい評価を聞いたことも無いのですが、ホラー監督らしさが学校や千反田家の暗い陰影に色濃くあらわれていました。千反田家など殆ど犬神家のように見えます。加えてホラー映画の演出的間合いが、学園ものの軽さを巧く封じていると思いました。萌えを提供するはずの「わたしきになります」さえ、広瀬アリスの端正な顔立ちと相まって、呪詛のごとくに聞こえるわけです。
妙味でした。

受賞歴もある面白い原作の映画化であり、映画の面白さが話の面白さに依存しているとは言えると思います。加えて本郷奏多は大好きな俳優でした。

いずれにしても、私にとって反発心でなく普通に傑作と言える映画だったのです。
不思議なものです。
でも、ときどきある世評との齟齬は、楽しいものです。そっちのほうが、俄然、レビューし甲斐があるからです。

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津次郎