劇場公開日 2017年7月21日

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「実話であるからの感動」ビニー 信じる男 kazzさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5実話であるからの感動

2017年8月6日
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鑑賞方法:映画館

単純

泣ける

興奮

ビニー・パジェンサは、交通事故後復活して、結構な期間プロを続けていた。
あまり日本では知られていないが、アメリカでは一般的に知られているのだろうと思う。

映画では、デュラン相手の世界戦が復帰戦になっているが、実際は他の相手との世界戦で復帰を果たしており、デュランとは復帰2戦目か3戦目だ。
これは映画的な脚色で、知名度の高いデュラン戦をクライマックスに持ってきたのは正解だ。

ボクシングの試合は、大きく3戦が描かれている。
最初はロジャー・メイウェザーとのWBC世界スーパーライト(当時はジュニアウェルターだったはず)級タイトルマッチ。
父親がビニーをチャンプと呼ぶので分かりづらいが、ビニーは挑戦者だ。
その前にビニーはIBFの世界ライト級チャンピオンになっていたので、父親は彼をチャンプと呼んでいたのではないだろうか。
ライト級は一度も防衛できず、階級を一つ上げてのメイウェザー戦だった。
ここでは、
挑戦者でありながら、直前までウェイト調整を怠け、試合前夜にギャンブルや女にうつつを抜かすところが描かれているが、
事故後は根性ものに一変していて、
このキャラクター設定を活かした人間ドラマになっていないところが、やや不満ではある。

2試合目はWBA世界スーパーウェルター級タイトルマッチ。
2階級上げて、王者ジルベール・デュレに挑戦した。
これに勝って2階級制覇チャンピオンとなる。
アーロン・エッカート演じるトレーナー ケビン・ルーニーの2階級上げるという判断が正しかったことを証明すると共に、揺るぎない二人の信頼関係の構築を描いている。

そして、事故と事故後の再起に向けてのトレーニングが描かれ、
いよいよロベルト・デュランとの復帰戦に突入する。
が、ここからは単に良い話になってしまった。
勿論、感動的ではあるが、伝記の域を出ていない。
ある意味、単純で分かりやすく、感動しやすくもある。

同じく事故からの奇跡の復活実話を題材にした「ラッシュ/プライドと友情」に比べると、単純すぎて物足りない。
ラウダに対するハントのような明確なライバルが本作には出てこないので、比べられないかもしれないが。
冒頭のシークエンスでは、ビニーはボクシングに本気で取り組んでいないように見え、命懸けで復帰を目指す意識変革の過程が見えないことが、後半の物足りなさに繋がっている。

主演のマイルズ・テラーは、体を作り、「セッション」以上に熱のこもった演技を見せる。
アーロン・エッカートは、禿げ上がって腹がダブつき、別人のようだった。
これが役作りだったと後で知って、驚いた。

ビニーは、復帰後はスーパーミドル級に戦場を移している。
さらに2階級上げたことになる。
デュランから奪取したタイトルを含めて、マイナー団体の世界タイトルは取っているが、メジャー団体では3階級制覇はできなかった。

kazz