「異色のハードボイルド。」午後8時の訪問者 バッハ。さんの映画レビュー(感想・評価)
異色のハードボイルド。
シロウト探偵物というジャンルがあるが、まさかダルデンヌ兄弟がジャンル物にここまで接近してくるとは思いもよらなかった。もちろんダルデンヌらしい現実の社会問題への告発や警鐘は込められているのだが、まず医者であるヒロインが、患者の脈拍の変化から「何か知ってるわね!」と切り込んでいく捜査の仕方が新鮮で面白い。
もうひとつ感じたのは『チャイナタウン』でも『ロンググッドバイ』でも何を引き合いに出してもいいが、これが正統派のハードボイルドミステリーであるということ。
推理にはさほど重きを置かず、あくまでも主人公があっちにフラフラこっちにフラフラと動き回るうちに、怪しい人物が次々と現れ、やがて真相にたどり着く硬質な迷宮めぐり。孤独な暮らしをしているらしいこと以外背景がわからないヒロイン像も、ゴツゴツとしたハードボイルドの触感にぴったりだった。
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