劇場公開日 2017年5月13日

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「いろんな角度から見て…」破裏拳ポリマー うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0 いろんな角度から見て…

2025年10月1日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

まあひどい出来栄えの映画で、全方位から考察して、作る価値があったとはとても思えないアクション。関わったすべてのスタッフに同情を禁じ得ないレベルのひどさだった。

唯一、感心したのは、スーツの作りが意外に見た目重視で、おそらく試作品から何度か考察したらしい跡がうかがえること。それによって、見栄えのする動きが可能になって、キャラクターの表情が見えるという最大の武器を手に入れたことぐらいか。変身ヒーローって、表情が見えない分、痛みとか、苦悩する姿が伝わらない欠点があったけど、そこが改善されていたと思う。

まず、どの世代を狙ってこの映画が製作されたのかだが、そこが出発点とするなら、タツノコのアニメを実写化して次々に爆死を遂げていった背景がありながら、またしても。というところか。こういう映画って、子供のころアニメに直撃された世代を狙って映画化されたのがいちばんの動機なのだろうけど、もう40年も昔のヒーローをリアル路線で実写化するのなら、それなりのやりかたがあろうに。この出来では、今の子供たちのハートはとらえられないし、そのお爺ちゃんのハートも無理。見てないから何とも言えないが、テレビで見られる『仮面ライダー』の最新の技術にも追いついていない気がする。

警視庁と自衛隊が巻き込まれる規模の、国家的陰謀の犠牲者を描いたわりに、巻き込まれる人間の少なさや、たどれば必ずつながっている登場人物たちの背景も、すごく浅はかだ。

使われている小道具がやけにレトロで、旧一万円札や、ピッチのようなケータイ。VHSのビデオデッキなど、出てくるが、インターネットは稼働しているという不思議な環境で、昭和っぽさを狙って、予算の許す限りかき集めたのだろう。余計なことに神経を使う分、作品のクオリティが落ちるだけだというのに。

芝居も妙にヒステリックで、抑揚が激しい。長谷川初範なんか、うまい俳優の部類に入るのだろうけど、主人公を捜し、見つけ出し、ヒーロースーツを与え、バックアップに徹しながら、父親との関係性を紐解き、悪を憎みながら身内に裏切られ、死んでいく。みたいな、複雑な芝居を職人のように表現している。とても気の毒だ。同世代ではイッセー尾形なんか、ハリウッドレベルの評価を得ているのに。

本当ならきちんとした筋書きがあって、骨のある脚本を仕上げ、息遣いのしっかりした演出をつけ出来上がるドラマに、目を奪われる特殊効果と、ハラハラドキドキのアクション、俳優たちの息詰まる芝居があって初めていい映画になるのに、全てが上っ面だけのまがい物で作られてしまった。情けないやら、哀れでならない。

どうしても言わずにいられない。偽闘(または殺陣)のレベルは、世界的に見て日本の映画界はおそらくガラパゴス化してしまっているようだ。蹴りで吹き飛ばされた人間がコンクリ壁に叩きつけられ、壁が大きくひび割れ、倒れた人間が血を吐きながら起き上がってくるなんて、もはや日本だけじゃないだろうか。

以上、いろんな角度から、ダメだと思うポイントを考えてしまった。そういう意味で少しの役には立ったかも。

うそつきかもめ
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