僕とカミンスキーの旅のレビュー・感想・評価
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型を破る柔軟さと、痛烈な批評性。芸術と芸術家について描くメタアートとしての価値も
芸術好きを自認するお上品な中高年の観客が、美術を題材にした心温まるロードムービーを期待して観賞すると、予想と違いすぎる展開に卒倒してしまいそう。“盲目の画家”がかつて時代の寵児だったというエピソードをはじめ、美術界をあざわらうかのような皮肉が満載。シニアライフを賛美する昨今の風潮に冷や水をあびせるように、老いの哀しさ、取り返せない青春といった残酷な現実も突きつける。
ジャンルの定石をなぞらない。ウェルメイドにしてたまるかという、ラディカルな気概が伝わってくる。美術に限らずアートの商業化が進むなか、型にはまる=大衆受けしやすい方へ創作がソフィスティケートされがちだが、芸術とは本来、既存の価値や常識を疑い、笑いのめし、新たな視点や独創を表現するもののはず。その意味で、本作は芸術のあり方や芸術家の生き方を扱いつつ、映画自体も芸術の本質に忠実であろうとする、メタアートとしての価値がある。
辛口
このご老人は若造に騙されるほど、呆けてはいないですよ。勝手にハートフルコメディ作品だと思って鑑賞したのですが、なかなかな辛口作品でした。死ぬ前に昔好きだった人と会いたいだなんて、男性しか思わないんじゃないかなあ。
「捨てるものはない」という執着を捨てる
レビューをながめた時点での印象はネガティブなもにだったが、見終えてみると実に余韻のいい映画だった。
かつてマティスやピカソと交流をもっていた盲目の画家カミンスキー(実際にそんな人物は存在しません)と、彼の伝記を書いて一発当ててやろうと目論む美術評論家セバスチャン。
ひと癖もふた癖もある人物が次から次へと登場してくるし、有名画家にインスパイヤされたコラージュのような映像や、突飛なセバスチャンの妄想などなど、北欧ぽいニヒルさと東欧ぽいシュールさを感じながら、コメディタッチのロードムービーなのかと観ていたが、二人が、かつての恋人テレーザに会いに向かう途中での達磨大師のエピソードを聞いたあたりから僕の印象が変わってきた。
断られ続けても弟子入りを乞う青年に、達磨大師が「捨てるものがないという執着を捨てろ」(大意)と諭す。
はっとした。
つまり、自分にはもう何もない、という考え自体がまだこだわりを持っている証拠なのだと。
たしかに、セバスチャンの彼女の家には、クロサワ映画のポスターや書の額が掛けられていたので、日本趣味であることは薄々気が付いていた。なるほど、禅の思想を問うているのか。その視線から見れば、この映画の奥深さが感じられるようになった。
テレーザとの再会は、期待した出会いではなかった。立ち去るその時、カミンスキーの胸にあった感情はなんだったろうか?画家として大成したカミンスキーの創作のエネルギーには、まちがいなくテレーザに対する想いがあったはずだ。その源であったテレーザの現状を知ってしまったことで、失望はあったと思う。だけど、盲目の老画家はその時、過去に執着していた自分を捨てることができたんじゃないかと思えた。
思い出せないが、たしか日本の映画かTVドラマで、チンピラ崩れの若造が資産家の老人を誘拐したものの、散々にその老人に振り回されて結局何も得られず、二人の友情だけが残ったみたいな、この映画によく似たものがあったようにぼんやりと思うのだが、さてそのタイトルはなんだったろう?
まあ、そんなことに執着するのはよしておくとするか。
僕の自分を探してしまった旅
最近(私が見る映画では)よく見かけるダニエル・ブルームが主演と言う事なので、見に行ってみました。また、これも最近、似た名前のカンディンスキーと言う画家の絵を、目にしていた事も理由かな。ぶっちゃけ、その人と間違ったという説はあります(苦笑)
はじめのうちは、ゼバスティアンの愚図具合ばかりが強調されるような気がして、なかなか冗長に感じます。ですが、ゼバスティアンとカミンスキーの旅が始まると、今度は逆に、カミンスキーのマイペース具合と、それに振り回されるゼバスティアンの姿を見る事が出来て、一気に物語は進み始めます。まぁ、この作品は、そこから始まりと言っていいんじゃないですかね。なんか、結局のところ、ゼバスティアンの自分探しの旅になってしまった気もします。
出てくる登場人物が、これでもかと言うほど、老人ばかりで、且つ、なんともコミュニケーションが取りにくい老人たちなので、『実は、認知症でした』と言う設定も出てくるのかと思ったんですが、明示的なそういうシーンはありませんでした。でもなぁ、あまりにも、すれ違うコミュニケーションなんで、そう言う切り口が入る余地はあったのではないかと思います。でもm、あれか、芸術性とかの問題で、そう言う設定にはしなかったのかな。
ゼバスティアンの“恋人”の部屋が、日本のもので飾られていたので、日本人としては、そっちの設定が気になりました(笑)
フェイク
画家の夢を若いころに諦めた美術ライターセバスチャンとピカソの友人で影響も与えた盲目の老画家カミンスキーがカミンスキーのかつての恋人テレーザに会う為に旅をするロードムービー。
まるで実在の人物かと思わせるオープニングから始まり、ボケているのか本気なのかわからない老人達のやりとり。
偏屈とも思えるカミンスキーと意地汚いセバスチャンとの駆引きと心の交流が小気味良く愉快で温かく時に狐につままれた様な気分になる楽しい作品だった。
旅行気分
ロードムービーなので旅行気分が味わえて良いがちょっとかったるかった。
男のロマンと女の現実。
過去を引きずって生き尚且つその過去に戻りたがる男が憐れだわ。
知らなきゃガッカリする事もないのにね~。
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