わたしは、ダニエル・ブレイクのレビュー・感想・評価
全194件中、81~100件目を表示
【ケン・ローチ監督の慧眼は、官僚主義の愚かさをシニカルなユーモアを交えつつ激しく糾弾する。現代が抱える格差社会へケン・ローチ監督が怒りを叩きつけた作品でもある。】
ー 心臓発作のため、雇用支援手当で細々と生活するダニエルとシングルマザーのケイティが徐々に社会的弱者になっていく過程が観ていて辛い。
(冗談だろう?と思えてしまう、イギリス行政の仕組みや小役人たちの言動の数々に嫌悪感を覚える。)ー
・職業安定所の壁面に”I、Daniel Blake" と大きくスプレー缶で落書きし、警察に連行されるダニエルの姿は市井の弱者のささやかな抵抗であり、印象的なシーンであるが、根本的な解決には全くなっていない。
・イギリスの右傾化及びEU離脱の流れに歯止めがかからない背景は、セイフティーネットワークが破綻している事と、蔓延る官僚主義を露わに描くこの映画で良く分かった。
<現代日本でも、同様の状況が密やかに進行していないだろうか?と危惧せざるを得ない事に気付かされる作品。>
<2017年6月10日 劇場にて鑑賞>
■2021年12月23日 追記
- 忌まわしき過去-
・日本でも、”幸せロード”(高度経済成長時代に謳われた言葉:20代で結婚をし、子供を設け、自宅を購入し、数々の社会保護制度の元、貯蓄を蓄え、悠々とした老後を送る・・。)が、リーマンショック以降崩壊した事は、万民が知っている事である。
リーマンショック時に、人事に居た私は、物凄いプレッシャーと、当時の阿呆な担当役員の
”何で、こんなに期間従業員が居るんだ!”
という罵声を毎日浴びながら、雇い止め通告を期間従業員の方々に毎日夜遅くまで、製造課長たちと行っていた。(目の前で泣かれると、正直キツカッタ・・。)
更に正従業員の仕事も無くなり、可なりの方に関連会社に出向して頂いた。
気がおかしくなるかと思ったが、数名の先輩の言葉に助けられ、何とか乗り切った。
だが、当時雇い止めをした方々及び(採用も担当していたため)所謂、就職氷河期と言われる世代に当たってしまった方々に対しては、合わせる顔が無い。
言い訳に過ぎないが、それでも当時、私は
”会社の年齢構成を考えると、300名の技能職の採用は必要です!”と会議で必死に説明した。
だが、当時のお爺さん副社長たちは、”先が分からないから最少人数の採用にしよう・・”と他人事の様に言ったモノだ。私の上司も必死に粘ってくれたが、駄目だった・・。
で、現在その付けが来て、私は毎日生産要員確保に走り回っている。
先見の明を持たない保身的な者が、高い地位にあっては駄目だという事を痛感している。
政府も数年前から、就職氷河期に当たった方々への支援を始めているが、継続、発展してお願いしたい。
非正規労働者に頼って、利益を生み出す会社には、いつか必ず、付けが来る。
GAFA然り。日本の企業然り。
社会的弱者を生み出す社会に、未来はない。
”お前が言うな!”と言われる事は重々承知の上、私は日々、且つての過ちを修正すべく、日々を送っている。
何と言えばいいか分からない後味
何の予備知識もなく観たら、とんでもない映画だった。
真面目に勤労し、納税し、妻の介護までしてきた1人の男が、心臓病で仕事出来なくなったことを就労不可と認めない、医学知識の浅い人間が安易に出した結論のみによって、社会からはじかれていく。
身体に無理をさせて仕事に就くべきだったのか。
どんな屈辱や理不尽にも耐え、何度も求職者申請を続けるべきだったのか。
初めだけ手を貸してくれるかもしれない友人知人から、信頼を担保にお金を借りれば良かったのか。
いや、そうではないだろと思いたい。
一つ目は死んでしまう。そんなの過去の奴隷と同じではないか。
二つ目、三つ目は、赤の他人の話や創造だと思って外から見るから言えることだと思う。
二つ目三つ目を推奨しているような、映画に批判的なレビューを読んだ。
とても恐ろしい考え方をする人間がいるんだと思った。
昨今増加している、匿名では正しいことだけを追求する理想論自己陶酔にしか、私には思えない。
本人に非がないのに、惨めさに耐え続けるのが市民なのか。
返すあてもないお金を借りて、周りから信頼を失い老いていくのがベストか?
残酷な外野の正義感などいらない。
真綿で首を絞めるような、リアルな不幸を見事に描いている傑作だと思う。
清貧と言う名のレクイエム
「万引き家族」の原点のような映画、カンヌで常連の是枝監督にも影響を与えたのであろう。舞台は英国だが普遍的な社会問題を真正面から描いている。しかしながら、本当に観て欲しい人たちには観てもらえない映画だと思うと閉塞感と無力感に苛まされる。ケイティの「彼は決して貧しくはなかった、お金では買えないものを多く持っていたから・・」の弔事は一抹の慰め、せめてもの救いを与えてくれた気がする。
落ち込んでいたら、浅はかにもフィリップマーローの「強くなければ生きられない、優しくなければ生きている価値が無い」(If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.)の名セリフが浮かんできた。
お役所仕事
海外でも役所は日本と同じなんだなーと思いました。
マニュアルに従った仕事しかできず、個別対応ができない。
結局は、窓口の末端の人らに言ってもだめで、制度を根本から解決しないと意味がないんですよね。
病気により働けなくなったダニエルが、苦しい現実を見せられます。それを見ているのは辛い気分になりました。
レビュー
ケン・ローチ監督作。淡々と見せる構成になっており、より現実がリアルに感じられ、やるせなさがこみ上げる。様々な社会的な暗い部分が見えるが、全く希望がない訳でもない部分も含めて、かなり現実的な映画です。
明るい映画ではないですが、人生や社会を考え直すきっかけになり得る映画だと思います。
エグいほど現実
ちょっと前にまさに主人公のような境遇になったので、他人事ではなく感じ入り込んでしまった。あの公務員の感じまでそっくり。自尊心削られるんだよ。お金のために、何で自分をここまで貶めなきゃならないんだろう。あのときの情けない無力な、踏みつけられた自分を思い出す。
人は自分より弱い者は助ける
のだから
彼も強気ではなく一歩引いてみたら
変わっていたかもと思う。
彼は正しいけれど伝わらないなら
怒るばかりではきっとだめなんだ。
言ってることは正しいよ、
でもだめなんだよ。
不正なことする人がいるから
そういうマニュアルができててだめなんだよ。
なんでもネットでというのは
先日のソフトバンクのダウンを思い出した。
ネットが繋がらないシステムダウンを
ネットでお知らせしてますってやつ。
タイトルが全てを語る
簡潔ながらも魂のこもった作品に出会えた。
このタイトルが本作のメッセージの全てを語る。
I, Daniel Blake
nothing more, nothing less
無数のシステムが複雑に絡み合い、何をするにも簡単明快にはいかなくなってしまい、世の中の正義など失われてしまったように思われる現代に暮らす私たちが忘れていること。
自分は管理番号でもなければ顧客でもなく、Daniel Blakeという人間で、それ以上でもそれ以下でもない。これが人間に当然として備わっているはずの尊厳である。一人の人間として、大きな者には媚びず、困っている隣人は助ける。即物主義の社会においてはなぜこれが当然としてなされないのか?
AIを始め情報化社会に対してアイロニカルに接近しようとした作品は多数あるが、ここまで本質をクリティカルに突いた作品もないだろう。この一行のタイトルと100分の映像で全てを語る様は美しくもある。
他人事では全くない!!
ダニエルの第一印象は声が高いというものでした。生活描写やお役所対応がリアルで引き込まれます。人々の善意で成り立っているのだから、仕事の話は取り合えず受けて欲しかったです。母子に入れ込み過ぎなんじゃないかと思われるギリギリのバランスだったと思います。日本の政治や企業も「今だけ、自分だけ、お金だけ」の風潮で、2018年12月30日にTPPが発効し、国民の暮らしは更なる地獄に叩き落とされますが、人々に善意があるかは日本ではあまり期待できない気がします。
わたしは、ダニエル・ブレイク
「人生は変えられる。隣の誰かを助けるだけで。」
そんなコピーがついている。
なるほど、と思いながらも隣人の優しさと愛情だけでは、どうにもできないことがある。どうすれば良かったのかな?と思わずにはいられない。
とっても優しい映画なんだけど、ケンローチ監督の怒りがスクリーンの裏に見え隠れする。
本当に本当にやりきれない。
でも、これが現実。
タイトルが素晴らしい。
やりきれない話
世知辛いと言うかなんというか。
日本で起きていることは世界各国で起きているのだろう。
変わりゆく社会に順応できない人間は切り捨てられるのか。
綺麗事だが、そうならない社会を目指さなくてはいけないと考えさせる映画だった。
初ケン・ローチ
噛み合わない会話に徒労感。ダニエルも堪え性がないというか…。
フードバンクのシーンは本当にいたたまれなくなる。
そしてゲスなわたしが「あ、これもしかして」と思った通りになる。
お役所側にもダニエル側にも、なんかこうもっと色々やりようがあると思うのに。
「ゆりかごから墓場まで」はもう過去のものなのね。
胸が締め付けられる作品
真面目で正直な人がホームレスになっていくのを見てきた、と役所の中で唯一ダニエル(=市民)の味方になってくれたアンの言葉は、私たちが生きる世の中にも通づる。
きちんと生きてきたダニエル。
だからこそ歯痒い。医者に止められても国からの手当てがでないなら、いっそのこと仕事しちゃえばいいのに!!
とはいえ、途中で倒れて依頼者に迷惑をかけるのもダニエルの真面目な人柄上できなかったんだろうなぁ。
ああ、歯痒い。
世の中の流れにフレキシブルに対応することができない人がいざって時に頼れる場所は隣人であり、国ではないのね、きっと。
国がやるべきことができてない、と憤慨するがその政治家を選んでるのも市民というこれまた歯痒い世の中…_:(´ཀ`」 ∠):
素晴らしい作品
素晴らしい作品。
イギリス国内の状況を皮肉に確実に表現しており、ラスト付近での壁への落書きは、爽快。
その瞬間の町の人々の反応。
この監督は他作品でも労働階級をてテーマにとられていることが多いですが、この作品は特に群を抜いている。
最後はやっぱりか、と悲しくなりましたが、だからこそのこの訴えが胸に刺さる、そして人生とはそういうものだと改めて思わせられる、そういう作品です。
数々の賞を受賞していますが、その栄光に引けをとらない素晴らしい作品ですので未視聴の場合はみた方がいいです。
涙無しにはみられないバッドエンド
ケイティがフードバンクで缶詰を貪り食う姿に号泣
お役所仕事とは正にこの事。
公共福祉だからこそ厳格に運用されるべきで個人が融通をきかせてしまえば規則が形骸化してしまいシステムが崩壊するとはわかってはいるが。
不正受給の問題を取り上げないのを片手落ちという人がいるかも知れないが、あくまでこれはダニエルブレイクという一市民のお話と言う事で。
バッドエンドを予感させるクライマックスが切なすぎる。
たかが金のことで人としての尊厳を傷つけられるくらいなら、犯罪行為で稼いだ方がマシだと思ってしまう。
タイトルなし
法律を改正されるほどの大きな反響を呼んだホームレスの実態を描いたドキュメント演出を手がけ、イギリスの労働者階級や移民を描くことで定評を得ている ケン・ローチ監督の作品
.
お役所仕事の心ない対応に
少しでも親身になって対応してよと
はらが立つ
.
寄り添う心 優しさはいつでも必要
ダニエルに助けられる母子
優しさに触れ子供達が笑顔でいるシーンに救われます
それでこのタイトルなのね。
「お役所たらいまわし・あるある」「オペレーターにつながらない・あるある」。
病気をしたら仕事に就けないし、小さな子供がいて学歴も中途半端では、働きたくても働けない。それぞれの登場人物に、自分を置き換えて観ていました。やるせない。
「困ったときはお互い様」「助けてもらったら、今度は助ける番」。そんな当たり前なことが、とても特別に見え心温まる。
「俺の名前を聞け!」なダニエルの行動に拍手を送った一人です。
あの子供たちも、きっといつかダニエルの事を思い出して、行動してくれるでしょう。
お役所もAI化した方がいい
主人公は心臓が悪くて医者から仕事を止められている。
公的手当申請の審査では「働ける」と判断され、仕方なく求職活動をするが、企業側に迷惑をかけることに。
職安で知り合った可哀そうな母子家庭を助けるが、次第にそんな余裕はなくなる。
「手当が欲しいんじゃない、これまで働いて税金を納めてきたことに、もっと敬意を払ってくれてもいいんじゃないか!」
日本も全く同じ状況だと思う。
全194件中、81~100件目を表示