「頭をガツンと殴られたような衝撃」わたしは、ダニエル・ブレイク ピンクマティーニさんの映画レビュー(感想・評価)
頭をガツンと殴られたような衝撃
ラストシーンで声をあげて泣いてしまいました。
映画を観て嗚咽するなんて初めてのことかもしれません。
イギリスが舞台ですが、公務員のお役所的な応対や窓口のたらい回し、本当に必要な人に支援が届かないという状況は、イギリスだけでなく日本や世界中で日々起きています。
イギリスは、貴族階級と労働者階級がいまだ厳然と分かれていると聞きましたが、日本も格差が開き、同じような状況になりつつあります。
私の親世代が現役時代は、高度経済成長期で、たとえ資産がなくても真面目に働けば家族を養いマイホームが買え、定年後も年金で生活していけました。
今や非正規雇用が増え、私を含め労働力を売って生活する「労働者階級」は、一度働けなくなったり、高齢になったり、ひとり親になったりしたら、立ち往生してしまいます。
ケイティに他の手段はなかったのかと思ってしまいますが、日本でだって、しかるべき知識や助けてくれる人がいなければ、孤立して公的支援を受けずになんとかしようとして悲しい結果になる人が少なくないのです。
テーマは深刻だし、静かな映画ですが、よくできたエピソードやユーモア、皮肉をまじえ、ときに不意を突くような出来事が起こり、最後までまったく飽きませんでした。
ケン・ローチ監督は御年84歳だとか、映画の制作時も80歳を越えていたそうで、社会の不正義への静かな怒り、衰えない制作意欲に賞賛の拍手を送りたいです。
映画祭に参加していたら、間違いなく長い長いスタンディングオベーションを送っていたでしょう!
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