劇場公開日 2017年3月18日

  • 予告編を見る

「煩雑な手続きでは人を助けられない」わたしは、ダニエル・ブレイク ローチさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0煩雑な手続きでは人を助けられない

2020年4月28日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

今、コロナウイルスの生活補償や事業補償で、手続きの複雑さなどが取り沙汰されているが、本作はイギリスの福祉制度の矛盾点を赤裸々に暴き出している。医者からは仕事をしてはいけないと言われているが、行政の失業給付金のカウンセラーからは仕事ができると言われて、給付金が貰えない。不服申立てを行おうとしても長時間電話で待たされ、煩雑な手続きのために一向に進まない。失業保険の申請をしようとしたら、職探しをしているエビデンスが必要と言われ、雇われるつもりがないのに面接を受けに行く。ある職場が採用すると申し出てくれても、そもそも主人公は医者に働くなと言われているので断るしかない。
行政の福祉制度が二重、三重に矛盾を抱えて本当に困っている人にお金が行き渡らなくなっている。時間ばかりを浪費して、迅速な対応ができていれば助かる命も助からななくなってしまう。
それでも主人公は人間としての尊厳は失わず、目の前の困っている人を助ける。理由も手続きもなく、困っていたら助け合う、それが人間のはずなのだ。

杉本穂高