ゲルニカのレビュー・感想・評価
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人類は愚かである証
第二次大戦の先駆けともなったスペイン内戦について知らずともピカソのゲルニカについては多くの人がご存知でしょう。スペイン・バスク地方の文化都市ゲルニカの空襲は鉱山や工場でなく街の破壊が主目的の都市無差別爆撃の端緒としても語り継がれています。
フランコ、モラ将軍らの反政府軍が共和制支持の多いバスク人への見せしめ爆撃をナチスに依頼、ナチスはナチスでテルミット焼夷弾の威力を試す格好の実験場として利用しました。ナチスによる一方的爆撃、機銃掃射の後イタリアの爆撃機による焼夷弾投下作戦が行われ死屍累々、都市は一夜にして焼け野原と化しました。
内政混乱に乗じて覇権拡大を目論むのはナチスに限った話ではなく明治維新とてまかり間違えば植民地化の憂き目を見ていたかもしれません。
ゲルニカ空爆の詳細を世界に伝えたのはロンドン・タイムズのジョージ・ステア記者ですが映画ではアメリカ人に変り、記事ねつ造やロマンスを絡めてエンタテイメント化されているのでやや幻滅です、アメリカでの興行を意識したのでしょう。
民主派を支援したはずのソ連・スターリン体制についてナチスもどきの同類と描いているのはスペイン映画としての本音なのでしょう。それとて大航海時代のスペイン人たちの植民地侵略を思えば大同小異、人種に限らず人類の暗黒史は枚挙にいとまはなく鬱々とした気にさせられます。
ステアの記事で惨劇を知った欧米はフランコ軍やナチスをこぞって非難したとされていますが同様の惨事が繰り返されたのも事実です、無差別爆撃はゲルニカが初とされいますが残虐性、規模において英国軍のドイツ・ドレスデン爆撃が該当するという見解もあります、日本人にしてみれば米国による東京大空襲や広島、長崎こそとなるでしょう。いずれにしても人類は愚かである証のひとつとしてゲルニカも語り継がれてゆくことが大事、映画化には使命が託されているのでしょう。
ラブストーリーでした。
スペイン内戦下のバスク。アメリカ人ジャーナリストの主人公と、人民政府側報道官のヒロインのラブストーリー。
スペイン内戦に興味を惹かれて鑑賞したのですが、戦時下の恋を描いた恋愛映画でした。
現実に疲れ、ジャーナリストとしての矜持を失った主人公。
検閲する側に回りながら、ジャーナリストの矜持に夢見るヒロイン。
バスクの広大な自然とゲルニカの温かい街並みを背景に、反発しながらも惹かれ合う二人のラブストーリーは見ごたえがありました。
爆撃シーンは迫力があり、その無残さも十分に感じることが出来ました。
ただ、前述の通り「スペイン内戦への理解」を期待していた私としては、少々期待から外れた内容であったのも事実で、若干評価を下げさせて頂きました。
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