「犯罪を、妖しい色気へと転換させたサスペンス」パーフェクトマン 完全犯罪 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
犯罪を、妖しい色気へと転換させたサスペンス
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全て見栄と虚像を守るための空虚しい殺人。最初は一つの小さな完全犯罪から始まる。それは魔が差すようにして手を出してしまった「盗作」という犯罪。証拠を残さずにうまく行ったかに見えたが、そこから坂道を転がり落ちるように主人公は、自らの見栄と虚像を守るための犯罪を積み重ねていく。
計画性はない。緻密さも低い。そんな危ない殺人だけれども、主人公を演じるピエール・ニネの美貌と妖気がそれを魅せるものに変える(「イヴ・サンローラン」でもサンローランをちょっと妖しく演じていて好きだった)。比較にはならないことはもちろん承知の上で、ついうっかり「太陽がいっぱい」のアラン・ドロンを思い出してしまった。さすがに21世紀の「太陽がいっぱい」と呼ぶには、主人公の度量の小ささ、犯罪の動機のチンケさなどで憚られるが、趣としては近いものがあるかな、と。罪に汚れ。罪に怯える姿を「色気」や「妖気」に置き換えて表現していた部分は非常に気に入ったところ。
映画が描いているのはひたすら美青年の殺人。そのテーマ一本に完全に絞っており、その分物語は至ってシンプル。それ以外のサブストーリーとなるようなエピソードもほぼ入ってこないストレートさで、さながら短編小説の一篇を読むような感覚に近い気がした。そしてこの作品に関してはその感じがよく合っているような気がした。
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