劇場版 はいからさんが通る 後編 花の東京大ロマンのレビュー・感想・評価
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今尚続くハイカラな恋と生き方
あらゆる形で映像化されてきた名作コミカル初の劇場アニメ化。
2部作の後編。
前編を見たのが約1年前なのでちと忘れ始めているが、見ている内に思い出してきた。
両家のある縁で許嫁関係のお転婆娘の紅緒と青年将校の忍。
最初は反発するが、やがて心から惹かれ合う。
が、忍はシベリア出兵で行方不明となり、紅緒は彼を捜す為に戦地へ赴く…で、幕を閉じた前編。
後編は…
忍を捜してシベリアや満州を旅するも、手掛かりは掴めず。
帰国しても諦め切れない紅緒の前に、ロシア人亡命貴族のサーシャが現れる。
彼は、忍に瓜二つで…!
前編が二人の出会いや惹かれ合う様がロマンチックに描かれていたとすれば、後編は、あらすじだけ見たらドラマチック!
でも、意外とコミカル要素もいっぱい。
冒頭、満州の列車で馬族に襲撃されるも、得意の剣道で成敗。さらには、馬に乗って追い掛ける!
相変わらずだなぁ、紅緒さんは。(←少尉風に言ってみた…)
瓜二つであっても、紅緒を見て何の反応も無いサーシャ。
やはり、ただの別人…?
が、そうではなかった。サーシャは、記憶を無くした忍だった…!
生死の境の戦地、極寒のシベリアで、ロシア人貴族のラリサに助けられた忍。
夫サーシャを亡くしたばかりのラリサは夫に瓜二つで記憶を無くした忍を夫サーシャとする。(忍とサーシャにも意外な関係が…!)
身勝手で強引な話ではある。
が、今、ラリサは病に瀕している。もう手の内ようが…。
そんな時、忍の記憶が戻る。愛する紅緒の事も思い出す。
紅緒の元へ急いで戻るかと思いきや、ラリサの事を見捨てる事は出来ない。命の恩人を。
忍の心も変わらずイケメンだ。
紅緒もそれを理解する。
二人は愛し合っている。
でも、再び共に歩む事は…。
それが二人の運命なのか…?
そんな紅緒を支えたのは、勤める出版社の編集長・青江。
彼もまた紅緒に想いを寄せ…。
紅緒は忍との結ばれない運命を断ち切り、青江と共に歩む事を決意する。
紅緒と青江の結婚式である大正12年9月1日、未曾有の大事件が起こる…。
前編同様後編も、一見さんにも分かり易く見易く。
前後編併せて入門編として無難に悪くはないが、全体的に軽く、急ぎ足な印象は否めない。
紅緒と青江の関係、好キャラである鬼島、関東大震災、そしてラストまで、もうちょっと巧く盛り上げられなかったものか。
演出や脚本に優れた手腕を感じられず、ドラマチックな展開の連続で紅緒と忍が再び巡り合うロマンチックなラストではあるが、ご都合主義的。
画も綺麗ではあるが、圧倒さには欠ける。
残念ながら前後編併せて、傑作にはなれず。
でも…
先日新元号“令和”が発表され、大正はまた一つ、昔の時代に。
しかし、時が流れ、時代は変われども、変わらないものも。
誰かを愛する事。
未曾有の事件が起きようとも、人々は前向きに生きる。
大正も、明治も昭和も平成も懐古な時代になる/なっていくだけじゃない。
今にも繋がる。今尚続く。
ハイカラな恋と生き方。
(「おはなはん」+「ひまわり」)×ハッピーエンド
原作連載・TVアニメ放映時に、ファンだった友人の影響で、軽く目を通した記憶があります。
気の進まない軍人さんとの結婚は、NHK連ドラの「おはなはん」。戦後安否不明の夫を探しに行くシーンは、イタリア映画「ひまわり」を思い出させます。
そういった観点からも「昭和のストーリー」を強く感じさせる映画です。
ですから「展開が速すぎる」「ご都合主義」という指摘も21世紀の観点での評価であり、私個人としては十分に楽しめました。
ハッピーエンドもまさに当時の少女マンガの王道です。
昔のリメイク
昔の作品は、子どもの頃でよく覚えてなかったんですけど、最後まで無かったらしく、このリメイクは、悪くなかったです。ただ、冗談はよしこさんって昭和の逆には、ちょっとひきましたw
楽しみすぎた分…ちょっと残念。
あの時間でラストまでの内容を良くまとめたと思います。しかし、前編に比べて雑な印象が否めません。特に教会の崩れ方から紅緒さんの脱出の描き方にモヤモヤしてます。「主人公は死なず」にしても無理があるし、少尉が紅緒さんを編集長より先に見つける展開に不自然さが生まれてしまったのが残念でした。それでも、それ以降の展開はよかったし、原作との違いも楽しめました。
よいまとまり
原作を読んでいるものとしては、前編はちょっと無理矢理詰め込みすぎだと思っていたので、後編は、え?!と思うほど思い切った端折もあったものの、監督さんのコメント通り、感情移入の面ではよくまとまっていたと思います。ちょうど美味しい小ネタな部分は原作に残されたままで、映画だけ観ている方には原作を読み直すという楽しみも残されています。ただ忠実に原作と照らし合わせると、少尉の事情、編集長、紅緒の事情にもやや語弊があり、もやもや感が残ります(二人は納得して別れたことになっている)……。でも全体としては、少尉はやはり(宮野さん含め)かっこよかったし、笑いの部分は上手く再現されていたし、とてもよかったと思います!
ついに"遺恨を晴らす、平成リメイク"
昨年の"前編"から首を長くして待っていた完結編は、大満足であった。
1975年から「週刊少女フレンド」で連載された大和和紀の名作を、日本アニメーションがワーナーブラザース映画とタッグを組んで本気で仕上げた、"遺恨を晴らす、平成リメイク"なのである。
"遺恨"とは、ついに完結しなかったテレビアニメ版(1978年6月~1979年3月)のことである。当時、モスクワオリンピック中継を理由に短縮・打ち切りを余儀なくされたアニメ版は、原作の中盤にあたるシベリアから帰国した記憶喪失の伊集院忍のエピソードで終わってしまった。
そのテレビ局への不信から、大和和紀がリブートを断り続けたとされ、ついに38年ものあいだ、最終回の関東大震災エピソードまで描かれることはなかったのだ。(同様の理由で、歴史的名作「あさきゆめみし」もアニメ化されていない)
それが涙・涙の大団円を迎える・・・しかも制作会社も同じ、日本アニメーションが手掛ける。これを目に焼き付けずにいられようか。
「はいからさんが通る」は、壮大な大河ドラマである。本来、連ドラ展開のストーリーでこそ成立するが、それを前後編2作でまとめるというH難度の構成を、この"平成リメイク"は成し遂げた。超高速展開についてもようやく馴れた。これはこれで納得である。前編で監督を務めた古橋一浩が前後編を通して脚本も担当している。
前編で新しいキャラクターデザインに戸惑ったところもあったが、後編ではすんなりと入ってきた。眼裏で新旧キャラクターを重ね合わせることができるようなったのかもしれない。
原作にはない紅緒が満州を訪れるエピソードで、少尉への深く強い想いを表現しつつ、鬼島森吾との出会いのシーンを補完している。それによって伊集院忍の記憶喪失が回復する瞬間が、紅緒の目の前に変更している。
また紅緒が思想犯で警察に逮捕されるエピソードをバッサリ省いている。原作での"伊集院少尉 VS 青江冬星"の決定的シーンがないにもかかわらず、それでもスムーズにつなげているのが見事である。
原作やテレビアニメシリーズに思い入れのあるヒトはもちろん、昔のテレビアニメなど知らない世代にも、花村紅緒の魅力に取りつかれるに違いない。大正デモクラシーのなか、まだまだ男女の待遇差が激しい時代に、スジを通し、正義を曲げない、つつましくも強いオンナ。
前編ではおてんばで天真爛漫な可愛らしい少女だった紅緒が、後編では相手の気持ちを察し、自我をコントロールするオトナの女性に変わっていく。
巡り巡ってハッピーエンド。クライマックスの、紅緒と少尉のキスシーンのあまりの美しさに感動する。
前編では、竹内まりやが書き下ろした主題歌「夢の果てまで」を花村紅緒役の声優・早見沙織が歌っていたが、後編でも竹内まりやが新曲「新しい朝(あした)」を提供している。
(2018/10/20/TOHOシネマズ上野/ビスタ)
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