劇場公開日 2017年4月7日

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「美女戦士の壮絶な自分探しの闘い」ゴースト・イン・ザ・シェル みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0美女戦士の壮絶な自分探しの闘い

2023年4月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

本作は、勧善懲悪のSFアクションという予想に反して、アクションと人間ドラマを巧みに織り交ぜた、趣のある作品だった。

本作の舞台は近未来。瀕死の重傷を負って脳だけ無事だった主人公(スカーレット・ヨハンソン)が、ハイテク技術により、脳以外の全身を義体化して蘇り、捜査機関公安9課で屈強の戦士として危険な任務を遂行していく。しかし、彼女は、時折見える幻覚に疑問を持ち、危険に晒されながらも、蘇生前の自分は何者かを探し続け、ついに、その謎を解明するが・・・。

本作はSFなので、どうしても、無味乾燥、ドライになりがちである。しかし、香港を想起させる夜景、街並み、主人公のボス役のビートたけし、母親役の桃井かおりが醸し出すオリエンタルな雰囲気が奏功して、本作は、温もりのあるウェットな仕上がりになっている。

冒頭の蘇生した主人公の肢体にフィットしたボディスーツでの迫力あるアクションは、エロティックではあるが、強靭な肉体美というイメージが強く、迫力が半端なく見応え十分である。主人公を演じるスカーレット・ヨハンソンは肢体も美しいが、それにも増して、その端正な顔立ち、眼差しが素晴らしい。真っ直ぐに前を見つめる透き通った眼差しに吸い込まれそうになる。あっという間に、本作で初見の彼女のファンになってしまった。

冒頭以降、このまま、アクション作品として堪能できると思っていたが、そういう作品ではなかった。彼女は、戦いに明け暮れながら、次第に、自分の過去に疑問を持ち、自分の本当の正体を探し求め苦悩していく。猛者でありながら苦悩する主人公の姿は、スパイダーマン第1シリーズの苦悩する主人公(トビー・マグワイヤ)を彷彿とさせるものであり、アクション作品というよりは人間ドラマの色彩が強くなっている。ここでも、主人公を演じるスカーレット・ヨハンソンの憂いを秘めた表情が効いている。迷えるヒロインを好演している。

ラストで、ついに、彼女は自分の本当の過去を知るが、そのことで、義体化の生々しい真実が暴露され、悪者に命を狙われることになる。彼女と同じ境遇の仲間を守るために、悪者と対峙して、満身創痍で死闘を繰り広げる主人公の姿に胸が熱くなる。

本作は、主人公の未来型の自分探しの闘いを描いた、素直に感情移入できる面白い作品である。

みかずき