「日本の今後を考えさせられる良作」ゴースト・イン・ザ・シェル あるみ伯爵さんの映画レビュー(感想・評価)
日本の今後を考えさせられる良作
攻殻機動隊を元にした良いハリウッド映画。
酷評されている北野武だが、私には良かった。
彼のヤクザまがいの風格は役どころにぴったりである。
実写版の映画はコスプレの鑑賞と似ている。
原作と違う部分を探すより、原作とはそもそも別物であることを念頭におき、似通っている部分を探して歓ぶのがかしこい楽しみ方ではなかろうか。
アニメや原作をそのまま見たかったのに! と憤慨するのが分かっているならば、初めから映画館に行かなければいいのである--。
街並みが日本のような中華街のような、オリエンタルな雰囲気なので、よくある勘違いハリウッドなのか? と思いきや、原作でもわざとこのように描かれている。
本作で表現されているのは「未来の日本」の姿である。
日本は遅かれ早かれこのようになる、という予言だ。
そのことに気付くと、攻殻機動隊を知らない人間でも、あることを考えざるを得ない。それは、我々日本人自身がこの先、国際化する自国でどのように生きていけばいいのか? ということである。
中華系の流入は止められない。
科学技術の上でも中国の台頭に日本が勝つ見込みは薄い。
某企業が買収されたのは序章に過ぎない。
スクリーンの中の一見奇妙に見えるTokyoは、フィクションでも夢物語でもなく、現状から予想される「近未来の日本」なのだ。
想像力のある人間ならば、「科学技術の発展の恐ろしさ」と一言で片付けられない幾つもの表象が、本作に散りばめられていることに気付くはずだ。
この作品を日本の映画館で観ていることに、意味を感じた。