「The ハリウッド版甲殻」ゴースト・イン・ザ・シェル chaoさんの映画レビュー(感想・評価)
The ハリウッド版甲殻
原作は人間と擬態の境界線が曖昧な世界を描いたものでテーマとしては非常にとっつきにくい世界観である。
アニメを見ている人はあらかじめテーマを理解しているので特に違和感なく作品に没頭できると思うが、事前に宣伝動画などで見ているだけの人だと単なるアクションムービーを期待させてしまう危惧があるだろう。なのでどうしてもアクションシーンがなくなる中盤では多少中だるみを感じるかもしれない。
アニメの作品には本来的な「正義」というものは存在しない。対して実写であるこの映画の中では最後にはっきりと「正義」のために戦うというくだりがある。テーマをとっつきやすくそして、大衆映画として成立させるための勧善懲悪的まとめ方に原作を知る人は違和感を感じるかもしれないが、これはこれで有りかもと思わせるものはあった。
配役では主演に充てたスカーレット・ヨハンソンは原作にそぐわないのではないかと多方面から物議を醸したが、フタを開けてみれば風貌・演技ともに素晴らしいの一言しかない。
そもそも国籍や人種と言うものが判然としない世界観なのだし、あくまで「擬態を借りたゴースト」にテーマを絞っているのだからこだわること自体ナンセンスだろう。
ビートたけしだけ日本語を話すことに違和感を感じるレビュワーもいるが個人的には下手な英語を話されるよりよっぽどマシである。
むしろ国籍や人種が曖昧な世界でネットワーク越しに意思疎通が出来るのだから多国籍感を出すために9課のメンバーなどに中国語やフランス語など話す工夫をしても面白かったのではと思う。
なんといっても今回一番のサプライズは桃井かおりであろう。40代以上の自分は出た瞬間からあの濃いキャラがこの作品を食ってしまわないかと終わるまでヒヤヒヤものであった。
全体的にはさすがのハリウッドという映像だし、原作へのリスペクトも存分に感じよく出来た作品だと思う。
北米では興行成績が作品の出来に対し振るわないらしく非常に残念だが、ここまで良く作り込んでくれた感謝の意味も込めて是非とも多くの方に映画館に足を運んでもらいたい映画だ。