劇場公開日 2017年4月22日

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「拳だけでは変えられない現実」イップ・マン 継承 うにたん♪(コロナが当たり前の世界)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0拳だけでは変えられない現実

2021年1月29日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

興奮

だが、「世界を動かすものは金持ちや権力者ではなく、心ある者がするべきだ」と言うのは大切な台詞と思った。
金も遣い様だと思うし、清貧と言っても成るように成った貧乏が良いとも言えない。

同門流派の拳士でありながら、葉門とチョンの貧富の差は歴然。
チンピラのサンに雇われてチョンがサンの師匠を襲うシーンは悲しい。
サンの分かりやすい崩れぶりも悲しい。
大勢を食わせるには金がいるのだ…。

皆悲しいのだが、葉門の妻も悲しい。
街の管理者と陰口を叩かれ、学校警備に勤しむ葉門は妻のガンにも気付かない。

武侠の世界では縁と怨が連なるが、人を叩けば叩き返されるのが世の理とするならば、武を持って立つ人は避けようもない別世界を持っている。
チャンがサンの師匠を襲った時もそっとドアを閉めて闘い、師匠も特に何も言わず迎え撃っている。
葉門対ムエタイでエレベーター内での闘争を察知した夫婦が無言で後ろ手に薬を渡し合うのはグッときたが、妻を守りつつエレベータードアを閉め別世界になった。

詠春拳拳士で車夫のチョンの夢、武館設立と最強、正統の証明は端から見れば、ただの欲望でしかないが、チョンがチョンであるためには必要な思いであると思う。そう思う反面、武館設立の箔つけに他の武館の師匠を叩きのめし、正統を謳っては争いの輪からは生涯抜けられないと感じる。

この「イップマン 継承」は全般に悲哀に満ちている。
トコトンの悪役も居ないがじわりじわりと盛り上がっていくこの雰囲気は従来のカンフー作品ではない。

当然、武術家であるが故の避けられない闘いを病身の妻が支える辺りは泣けてくる。
ラストの試合は命のやり取りを妻と双方の子どもが見ている中で行っている
正統派の拳法らしいアクションだった。

後、マイクタイソンのシーンはエキシビションらしくいい勝負をしてくれて、ありがとうと言いたい(笑)
「側にいる人を大切にする」当たり前にしたい事だが難しい。

うにたん♪(DCPにも抜け穴あるんだ)