「監督の思いはわかるけど…」太陽の下で 真実の北朝鮮 カナカナさんの映画レビュー(感想・評価)
監督の思いはわかるけど…
監督は旧ソ連で同じような統制社会を経験し、崩壊するのを見てきた人。変化の前後を知っているからこそ、思い入れを持ったのは当然だと思います。
ただ、ここに出てくる北朝鮮の現役住民は、崩壊後を知らない、仮に知る機会があったとしても、誰も口にできない。むしろ、比較対象を知らないほうが幸せでしょう。すべてが「そういうものだ」で済ませられるから。
北朝鮮が送り出す情報が体制に向くよう装われていることは、彼らも私たちも百も承知なのではないでしょうか。そして、外にいる私たちは、それを異様に感じるし、中にいる彼らは、体制に合わせて装うのが、ごく自然で普通のことだと思っている。年端の行かない子供ならば、それはなおさらです。周りの言うように信じ、そういうものだと思うのは、日本の子供たちだって同じです。
だから、映像はともかく、悲壮感溢れる音楽は余計でした。監督の思い入れではあっても、きっと彼らは悲壮感を抱いていない。愉快ではないけれど、それが日常であり、生きていくことだと思っているだろうから。
もし、監督が見た人に解釈を委ねたいのであれば、音楽はいらなかった。あるいは、むしろ監督の解釈、思いを率直に語ってよかった。映像であろうと、どんな媒体であろうと、作り手の思考を反映しないものはないのだから、正直に言えばよかった。
ただ、旧ソ連の人材が、北朝鮮に招かれて、こういう仕事をしている事実を知ることができたのは、そして、危険を冒して公開された映像は、とても貴重だと思いました。
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