わたしたちのレビュー・感想・評価
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巧みな映画
丁寧な描写の重なりの巧みさに圧倒された。。。
小学校高学年女子の仲良さ・扱いにくさ・意味わからなさ・複雑な心の機微をこんなに巧く表現するなんて。。。映画として技術力の高さがすごい。。。
なんかうまく感想を言語化できない…すごい…映画として巧い。。。
物語の前半部分、ソンとジアの出会いから一緒に遊ぶ仲になるまでのところ、いちばん好きかもしれない。3人で一緒にチャーハン食べるところがベストシーンだったな。人と人が仲良いことは、この世の何よりも良いことだなあ!仲良さの演出が、この後のストーリーに落差をつけるためのフラグだとわかっていても、ほんとに心がホクホクした。仲良い子とブランコに乗ったり、トランポリンで飛び跳ねたりするだけで幸せなんだよなあ。
なかいい友達が取られる感じ。いじめまではいかないけど、リーダー感だしてる子に気に入られていない雰囲気。誰しも経験したことがあるのではと思うけど、再現度が高かった。目線や距離の取り方が絶妙だった。
この齢は自分の世界が「学校」「家族」くらいしかないし、ストレス解消手段も限られてるから、どっちかでトラブルがあると本当に辛いのだ。なのに、泣いたりぐずったり八つ当たりしないイ・ソンの芯の強さには感心した。
「何かあった?言わないとわからないよ」ってこの年齢の子達には必ず言ってしまうワードだと思うけど、たとえ言ったところで心配させちゃうし、大事にされるのもやだし、言語化するのも面倒くさいくらい複雑だったりするし、、、お互いに歩み寄るのって大変なのよね。忙しい親のこと考えての態度だから、
女同士の揉め事は、はっきり言って意味がわからない。自分でもそこまで気にすることなのか、何に傷ついているのかわからなかったりする。弟のユンはそれが怪我として表面化しているので、「友達ともう遊ぶな」と忠告したり、相手をやっつけたり、相手の親と話し合って共有しながら、護る行為に繋げられる。だから怪我のように表面化できない問題は自分がどうにかして対応していかなければいけないという課題になる。
そんな状況をソンが突破するためのヒントとしてユンが言っていた言葉が印象的だ。「彼が叩いて、僕も叩いたら、いつ遊ぶの?僕は遊びたい」
これをきっかけに、ソンがジアに働きかけていたところで終わったのがよかった。
凄まじかった
・とにかく観ていて痛々しい感情がリアルな描き方で凄まじかった。鑑賞した作品を振り替えるといじめっこのグループの役割が決まっているのを観て、あぁ世界共通の物、人間らしさなのかぁって思えて来て、苦しくなる。それが子供だと感情に素直に生きているように見えてきて、いじめをする事はそういうものなんだと強く感じられてきて余計にしんどい。
・主人公は10歳の女の子で自分とは縁遠い存在だけど、何だか同じような痛みを感じてきて凄いなぁと思った。年齢的には父親に近いけど、何故か主人公の年頃の記憶に自分が戻って、もどかしくなる感情になるシーンの連なりが凄い。ボラと仲良くしてほしくないシーンやジアとソンに溝ができているけど親やおばあちゃんには仲良しの二人としているズレとか見ていて苦しかった。
・ソンは皆と仲良くなりたいけど受け入れられない理由がわからない感じが痛々しくなる。仲良くならなくとも普通に接してほしいというあの感じ。自分と重ねて観続けていると見るのをやめたくなるけどやめるのも怖くなる。夏休み明け前がとにかく怖かった。結果、ボラと仲良くしてソンとの関係はなかったことにしようとしているジアの感じ、とてもつらくなった。
・ボラは典型的なマウントを取ってくる嫌な奴でどうにか地の底に落ちないかなぁと思えてたまらなくなった。冒頭の別の住所教えたりして。途中、成績の結果か何かで泣いていてソンが渡したハンカチのお返しのマニキュアは何だったんだろうと思った。弱っている状態だったからだろうか、それにしては借りたものだから返すよって言って無責任で凄く嫌な奴だと思った。やっぱり地獄に落ちてほしくなってくる。
・いじめられっこのソンがとても良い子だけど痛々しさも合わせて持っていて、気の弱さがじれったくてたまらない。映画とは思えない、ドキュメントのような感覚になってきて凄かった。
・最後に、ジアと取っ組み合いになったのが苦しかった。ボラたちに一発殴ってやりたかったけど、実際にはああいうのはそうならないだろう。そして、いじめられっこ同士がもめるのが切ない。とにかく怖くて寂しい感情が蘇ってくるすさまじい映画だった。
まさに、わたしたちがそこにいた。
「わたしたち」「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」「最初で最後のキス」の、三本を立て続けに見まして、全部良くて、奇跡的なチョイスと、京都での公開時期の一致に感謝した。
志乃ちゃん〜と最後で〜は、高校生モノですが、「わたしたち」は小学生モノです。
役者は若いのに自然かつ繊細に表現していて、素晴らしかった。
5歳の自分も20歳の自分もマトリーショカのように自分の中にいるって誰かが言っていたけど(多分、花よりも花の如くでの誰かのセリフ)、まさにそういう気持ちになった。
10歳のわたしがソンやジア、ボラから見えた。
基本は主人公ソンと、裕福な転校生ジアと、前からソンに軽く意地悪をしているボラが中心に話は進む。
そこに5歳くらいなのに人生の達人みたいなことを言うかわいいソンの弟が良い味を醸し出す。
ソンの学校での状況はすごくわたし自身の過去を思い出させる感じでリアルだった。
はっきりといじめられているわけじゃないけれど、境界線に立たされていて、いじめられっ子ではない側に必死でしがみつこうとする感じを思い出した。
ドッヂボールでのラインを踏んだ踏まないのいざこざ。
あれは、あんたは劣っているということを暗にいわれているわけで、つらい。
ひそひそ話をする目立つ女子から誕生会に招待される代償に掃除を押し付けられ、お金がないからブレスレットを手作りして持って行ったのに、騙されてたっていうね。
泣ける。
そんなことされてるのに、ちょっと優しくされるとうれしくって仲良くしたくなる。人気者に好かれたい。仲良くしたい。
今ではそんなこと思わないけどあの頃は私もそうだったって思った。
ソンは共働きでそう裕福ではない(でも貧しくはない)家庭で育ち、お小遣いはあまりないけどお母さんの愛情を浴びて暮らしている。
ジアはとっても裕福だけど、両親は離婚しており、多分父方のおばあちゃんと暮らしている。前の小学校でいじめられていたみたい。つく必要のない嘘をついてしまうタイプ。
この嘘つきって部分。10歳くらいまでの私に顕著だった特徴で、わっ恥ずかしい、バレたって思った。
ジアと同じかはわからないけど、友達の輪の中で、羨望の注目をされたくて、愛されたくて、作り話を語ってしまう癖があった。
お母さんがイギリスにいて住んでいたこともあるってゆう誰も傷つかないしょうもない嘘を知り、ジアを抱きしめたくなった。
抱きしめたところでジアはちょっとひねくれて意地悪なままでしょうがね。
ボラはあまり書かれなかったけど、優等生でいろってゆう家族からのプレッシャーが強いのかな。猜疑心が強くて、人を信じていないので先に裏切って傷つけて喜んでいる。
褒められた性質じゃないけどいたなぁって思う。
小学生女子は性格が悪い。実体験としてわたしはそう思う。
傷つけ、傷つけられてちょっとづつ人付き合いを学ぶんだけど、今はちょっとづつが難しくって取り返しのつかないことになりやすい気がする。
無視したりされたり、嘘ついたりつかれたり、秘密をバラされたり、嘘の噂を流されたり。
全部やったことがあるし、やられた。
褒められたことではないけど。
彼女たちはこれから。
映画の最後に立っているここからどうなるか。
自分の醜さを認め、自分にない人の美点や環境を妬まず、自分を好きになる。醜さも含めて。
がんばれ。
ソンもジアもボラも、みんな抱きしめてやりたい。
ソンもジアもそしてボラも、もうみんな抱きしめてやりたい。そんな気持ちになった。
小学生の頃を思い出す時、ついつい楽しくて無邪気だった頃のことばかり思い出してしまうけれど、そういえば子供であるが故に今よりもずっと傷つきやすくて同じくらい残酷だったっけ、とこの映画を見て思った。小学校の教室で繰り広げられていた友情は、確かにこんなに不安定で頼りなくてか弱かった。自分がソンだったこともあった。ジアだったこともあった。ボラだったこともあった。3人ともかつての私だった。そして、ソンの時も、ジアの時も、ボラの時も、それぞれに苦しくて切なかった記憶がある。だからこそ、もう見ていて胸が痛くて痛くて、切なくてたまらなくなった。
冒頭のドッジボールのチーム分けのシーンからして胸が痛い。あんな残酷なことが、確かに毎日行われていた。あのシーンのソンの表情がまた切ない。演技とは思えないほどリアルで胸が痛い。そしてそこからの物語も、胸が痛くて切なくて、でもなんだかどこか身に覚えがあるような、そして思い出の痛いところを鋭く突きさされたような思いの連続だった。だれが悪いとか、そういうことじゃないんだよね。ボラが特に意地悪な女の子に見えるけど、そうじゃない。ジアが裏切り者に見えるかもしれないけどそれも違う。小学校と塾と家という狭い世界の中で生きる小学生たちにとって、仲良しグループという存在がいかに重要で、そこでいかにうまく渡り歩くかは、あの頃本当に深刻な問題だった。そんな世界で、やりきれない小学生たちの友情のすれ違いを、ここまで写実的に映像化した映画を初めて見た。私情を挟むでもなく、批判を打つでもなく、ただただ写実的に子どもたちの「社会」を描いて見せた。かつての現実を直視させられて、あまりに辛くて胸が痛むが、それでも素晴らしい映画だったと言わざるを得ないと思う。
赤く染めた爪と、その上から塗った水色のマニキュア。時がたってそのどちらもが剥がれ落ちてしまった。そして最後にわずかに残った赤い爪に、ほのかな希望を託す。やっぱり胸が痛いラストシーンだけれど、これ以上ないエンディングだったと思う。
胸がいっぱいになる
文句なしの星5つ。若き女性監督ユンガウン氏のほとばしる才能を見出し導いたイチャンドン監督の功績は大きい。友情、裏切り、嫉妬といった複雑な感情に戸惑い葛藤する子どもたちの姿をリアルに描く、一方で、友とじゃれ合ったりパタパタと走ったりする姿などまだ子どもらしさの残る屈託のない表情や仕草も余すことなく捉えていて、10歳という年齢特有のはち切れんばかりの生命力と不安定さの同居した様子を見せつけられ、胸がいっぱいになる。4歳の弟の欲求や感情のシンプルさと対比してお姉ちゃんの苦しみや葛藤がますます際立つ。4歳児は荒くれ者だが天使でもある。群れの中における人間の残酷さにさらされながらも、貧しくとも愛情深い家族の大きな何かに包まれて育っている主人公が静かに見せる芯の強さや正義感や誠実さに、人間のレジリエンス、生命力を感じる。10歳の少女をとおした人間讃歌。本当に子どもたちが可愛くて、パンフレットを買って何度も眺めては切なくも幸せな気持ちになっている。
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