「モロッコの風は熱く。 ブラピ×コティヤールではケミストリーは起きず…。」マリアンヌ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
モロッコの風は熱く。 ブラピ×コティヤールではケミストリーは起きず…。
第二次世界大戦下、任務で出会った諜報員2人の恋とその裏に隠された秘密を描いたラブストーリー&サスペンス。
監督/製作は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズや『フォレスト・ガンプ/一期一会』の、名匠ロバート・ゼメキス。
主人公であるカナダ空軍パイロットにしてイギリスの諜報員、マックス・ヴァタン中佐を演じるのは『セブン』『オーシャンズ』シリーズの、名優ブラッド・ピット。
フランスでレジスタンス活動をしている諜報員、マリアンヌ・ボーセジュールを演じるのは『インセプション』『ミッドナイト・イン・パリ』の、オスカー女優マリオン・コティヤール。
『BttF』や『フォレスト・ガンプ』、『クリスマス・キャロル』など、「古き良きアメリカ」を題材にした映画を制作する監督、というイメージのあるロバート・ゼメキス。
そんな彼のフィルモグラフィーの中で、第二次世界大戦中のモロッコ/欧州を舞台にした本作は異彩を放っているように思う。…まぁゼメキス監督作品に詳しいわけじゃないんだけどね。
ブラッド・ピット×マリオン・コティヤールというトップスターによるW主演も見どころの、ゼメキス監督の意欲作を鑑賞してみたわけだが…。………うーん。
決して悪い映画ではないと思うのだが、驚くほどに心に引っ掛からない。
前半の舞台はモロッコ。
当然観客としては、モロッコのエキゾチックな風景や風俗を期待してしまうのだが、そういったものはほとんど描かれない。代わりに描かれるのはCG丸出しの砂嵐。これじゃ満足できないよ。
せっかくモロッコという土地を舞台に選んだんだから、もっとその魅力を引き出して欲しかったところ。
本作は任務か愛か、その究極の選択に悩まされる男女のお話。物語はマックスとマリアンヌ、2人を中心に展開されており、ほとんどブラピとコティヤールの二人芝居のような映画である。
そのためこの2人のケミストリーこそがこの映画のキモ。…なんだけど、この2人の間に全く化学反応が起こらない。
双方、現映画界のスーパースターであることは間違い無いのだが、組み合わせが悪いのか配役が悪いのか、全然魅力的に映っていない。
ブラピは終始顰めっ面で辛気臭い。スパイのはずなのに苦悩が表情に出過ぎ。
逆にマリオン・コティヤールは圧が強すぎて、愛と任務の間に苦悩する女性に見えない。
何よりこの2人が全く新婚夫婦に見えないというのが問題で、描かれているのはロマンチックで悲しい物語のはずなのに、スルスルと心の表面を流れていってしまいなんの感情も動かされなかった。
また、マリアンヌがドイツのスパイなのか否か、というサスペンス要素が本作のポイントなのだが、その点が弱い。もっと揺さぶりをかけるかのような緊張感と意外性が欲しかったところ。
マリオン・コティヤールが演じてるんだからそりゃドイツのスパイでしょ、と思っていたらやっぱりドイツのスパイだった。せっかくのスパイサスペンスなんだから、そこはもう一段上の驚きを用意しておいてくれよ〜🌀
前半、出会ったばかりの2人の間に流れる気だるい雰囲気。これは結構好きだったので、下手に家族の物語に落とし込まずにこの方向性を突き詰めていってくれれば、結構お気に入りの映画になったような気がする。
割とすぐに記憶から抜け落ちてしまいそうな、パンチの弱い作品でした…😑