「往年の味わいに乾杯」マリアンヌ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
往年の味わいに乾杯
第二次大戦下のカサブランカ。
ドイツ大使暗殺の任務の為、パートナーとなった英国諜報員のマックスと仏軍レジスタンスのマリアンヌ。
偽装で夫婦を演じ、危険な任務の中で、二人はいつしか惹かれ合い…。
今の時代に珍しいくらいの、往年のハリウッド映画を彷彿させるような、戦争スパイ・サスペンス×メロドラマ。
ロバート・ゼメキスがこういうジャンルの作品を手掛けるとはね~。
まずはこの作品、映像や美術・衣装、主演スター二人の美しさに魅せられる。
冒頭や劇中で二人が語らう砂漠のシーン。「アラビアのロレンス」「イングリッシュ・ペイシェント」など、砂漠は映画に於いて一際目を見張る画になる。
大掛かりなセット、オスカーにノミネートされた衣装の美しさも作風に大いに貢献。
そして何より、主演スター二人。これこそ、ハリウッド往年のスター映画への最大のオマージュ。
女性ならブラッド・ピットの久々とも言える美形っぷりにうっとり、男性ならマリオン・コティヤールのどう表していいか分からないくらいの美貌にク~ラクラ。
二人共、実力派であると同時に、正統派の美男美女スター。クラシカルな作風にピタリとハマった。
そんな作風の中でも、SFX時代の申し子、ゼメキスのサポート的なVFXの使い方が巧み。
話の方は、前半は正直ちと退屈。
美しさや作風にはたっぷり酔いしれるが、肝心の話はメリハリに欠けた。
が、後半からサスペンスフルになってくる。
任務遂行の後、結婚した二人。子供も産まれ、幸せな日々。
が、そんな時…
妻がドイツの二重スパイという疑いが。それが事実ならば、抹殺せよーーー。
勿論信じられないマックス。
妻の疑いを晴らそうとする。
国への忠誠心もあるが、それ以上に、愛し合った日々は偽りだったのか…。
一度疑い出すと疑念の目で見てしまうのが人の性。
まるでマリアンヌが、マックスが疑惑を抱いているのを見抜いてるような素振り…に見える。
そして、真相は…
作品が正統派劇なら、真相も変に捻らず直球の展開。まさしく、“THE王道メロドラマ”。
ラストも悲しく、切なく、何処を取っても往年の名作への味わいに溢れていた。