「ホラーとして秀逸なのに結果暴れん坊将軍からの後味最悪」ドント・ブリーズ てんてんうつやつさんの映画レビュー(感想・評価)
ホラーとして秀逸なのに結果暴れん坊将軍からの後味最悪
端的に言うと。
エネミー=老人
ヒーロー=侵入者の構図なのですが、
ホラー、スリラーとしては成立しません。
ヒーロー側がやられることに恐怖どころか歓喜しか感じられないので。
実質は正義が悪を撃退する様を応援するだけ。
暴れん坊将軍見てるようなものです。
でも☆4.5なのは、
暴れん坊将軍でありながら、しかしホラー、スリラー映画としての手法、
カメラワークや音楽、映像美(悪魔のいけにえを彷彿とさせるシーンも)は
どれも素晴らしい(多分)という、異様なちぐはぐさがとても興味深いからです。
あと、老人半分敗北みたいな煮え切らないラストも、そのせいで
セブンやミストに並ぶ後味最悪映画に入れようかと思える程なので、
逆に高評価に。
0.5マイナスは侵入者が老人宅に入るとき、音に無頓着だったり段取り悪かったりと、
空き巣の常習犯の描写としてはマヌケなせいで
コントかと思ってめちゃくちゃシラけかけたからそれです。
以下駄文
なぜ老人応援一択でホラー不成立になるか…
盲の老人がその弱点に付け入られ
窃盗常習犯の人間の屑に金銭目的で襲われる話なのね
しかもその金は娘を事故死させられた老人が
せめてもの慰みに手にした慰謝料と知った上で
1人の侵入者の背景として、DV環境から妹と抜け出すための金が必要というのがあったり
また1人の侵入者は盲人を狙うことをためらうなど若干の良心呵責描写があったり
どの侵入者もまだ若く未成熟な人間であったりなど
窃盗(結果強盗になるが)への情状酌量を求め侵入者に感情移入させようとする点はあるけど
どれも犯罪の根拠としては弱く浅ましいため
まずヒーローを全く応援できないのね
一方の老人は
地下に娘を死なせた加害者を監禁し
死んだ娘のかわりにと新しい自分の子供を妊娠させているという狂気的な面があるものの
これは加害者が金の力で裁きを逃れた卑怯者であることに端を発する処置で
出産後の開放も約束していたりと
法的には罪でも人道的には悪とは言い切れない
つまり老人は悪いことはしていないのに理不尽に襲われることになる
となるとヒーローではなくエネミーなのに応援するしかないのね
結果
侵入者側が撃退や殺傷されるたびにスカッとするだけ
逆に老人がやられると不快で
終盤で老人劣勢になったあたりは腸が煮えくり返るほど
特に侵入者女が監禁されかかったところから抜け出し反撃
老人に刑務所で云々と捨て台詞を言うシーン
またその後のほぼラストの老人敗北かと思わせるシーンなどは
セブンやミストに並ぶ後味最悪映画に入れようと思うほど
以上でした…