牝猫たちのレビュー・感想・評価
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人生の悲哀
デリヘル嬢の中でも特にユニークな客を扱った物語。客との間には愛はないはずなのに3人がそれぞれ愛を感じてしまうところが面白い。
雅子(井端珠里)の相手はビルのオーナーだけど10年間引きこもりの男性高田。世の中のことはネットで全て知っていると思っているところが痛いけど、雅子に住む家がないことを告げられ、次第に愛について考えるようになったところ。
シングルマザーの結衣(真上さつき)は個人のベビーシッターに息子を預けるが、やがて虐待している事実を悟られながらも、SM好きお笑い芸人に身をまかせるようになる。その男も多分DVに走るのだと予感させられる。
結婚している里枝(美知枝)の常連客の金田老人は妻を亡くしたことに自責の念を感じ、里枝には一切手を出さない。やがてとんでもない事件へと発展するが・・・
もがきながらも何とか生きていこうとする彼女たちと、人生の目的が見つからないでいる男たち。みんな不器用だし、男女間の問題以外はどこかアウトロー的だ。金田老人の場合はちょっと可哀そうだけど、それぞれ道を切り拓いていってほしいものだ。逆に、盗撮やったり女の子たちへの対応がなっていない若い店員の堀切(吉村界人)はドラマの中で最低の男だと映るのだが、彼だけが人生設計を考えていたんだな~と、不思議なプロットに満足できた。
店長野中(音尾琢真)が堀切を殴りまくる暴力シーンは白石監督らしいところ。濡れ場が多いだけであり、ポルノとは言えないような作品でもあったかな。
面白かった、少し消化不良
シッター三上くんの家がゴミ屋敷みたいな必要あるのか?とか、
高田の引きこもりも会話で少しでも何故なのかヒントがあったら、とか、
谷口に、生粋のクズ感と暴力性が垣間見えるのに突き進んでしまう結依の依存性とか、
各自に抱える闇があることは伝わるけど、その闇の背景に描写不足が否めないので、単なるポルノで終わってしまった。
何かもう少し欲しかったな。監督が元々映画界の人だということが売りな作品ならね。
でも、一番の不満は女優さんたちが皆して貧乳だったことだなー。
何で作中一番の豊満オッパイがとろサーモンの久保田なんだよ!ww
ポルノじゃない。当面のアレ。
同じくリブート作品の「ジムノペディに乱れる」も観たが、それとは全く違っていた。
ジムノペディは、10分に1回の濡れ場を忠実に守っているなという印象を受けたし、女優さんは全員が全員、気後れするくらい綺麗な張りのある身体をしているし、濡れ場も見せ物としてしっかりしていてエロかった。ポルノを観たな、という実感があった。
対する牝猫たちは、濡れ場を濡れ場と思わせないような仕上がりになっていた。実際の身体は骨が浮いているし、セックス中冷めた視線が泳ぐこともあるし、単調だし、それでも女は演技を挟むし。
リアルな退屈さだった。
生活の一場面のセックスだった。
だからこそ、他のところに注目して観られた。
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ひとつひとつの、人との関わり合いでの選択が、どこまで相手の人生に作用するかはわからない。
【貧困女子】
恋人同士じゃない、恋人になりたいのかもわからない。
それでも、お互いが必要だと思ったとき、
それに応えてくれる瞬間があったらいい。
外の空気に触れる機会ができた。
言葉で表せない気持ちを身体でぶつけてくれた、ってだけで次に進む糧になる。
【人妻】
憐れんで、なのかはわからないけど
相手に寄り添うような言動をとったことが発端ですごい事態に陥った。
(この人についての考察はあまり浮かんでこなかった。子供ができないくだりが本当なのかわからないし、純粋に性癖が元になって行動してたんじゃないかな。)
【シングルマザー】
青年が、正義感を振りかざして通報していたらどうなっていただろうか。
息子が虐待されなくて済む?
青年がくれたおもちゃの怪獣、
知らないおじさんとお母さんと3人で食べるハンバーグ、
お母さんが戻ってきてくれたこと
そんな断片のひとつひとつが息子の生きる励みになるんじゃないかな。
青年も、二言目には「パチンコ行こ」だ。
他人事はそんなもんだ。
ヤク中芸人と関わって更にひどい事態に…
なんてことも、考えられなくはないけど。
あれでよかったんじゃないかな、当面は。
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最後、炎上デリヘルドライバーが貧困女子を迎えにきた。
来ても来なくても、さして状況は変わらない気がする。
けれど、『当面の』助けにはなる。
自分の一大決心が、大切だと確信できるような相手の決定的な助けになれたらそりゃ素敵だけれど、
ノリや思いつきの行動が、フワフワした関係の中で『当面の』助けになったらなったで、悪くない。
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とろサーモンのネタが普通に面白くて笑えた。
とろサーモン村田と店長の別の濡れ場も見てみたいなーと思った。
女優を美しく撮るための秀逸な設定
個人的な本命、白石和彌監督の登場である。
ロマンポルノはあきらかに"成人映画"であった反面、当時の日活の経営状況の問題もあって、"裸さえ出てくれば、どんな作品でもOK"という実験場でもあった。せっかくロマンポルノをリブートするのに、単なるエロさを求めるなら、もっと他の手段がある世の中である。
その点、社会派・白石監督が作る"ロマンポルノ"は俄然、楽しみになってくるわけである。
夜の池袋が舞台。3人のデリヘルで働く女性を描く作品。彼女たちは毎日、オトコたちに呼び出されるわけだが、オトコたちにも事情があり、彼女たちにも悩める生活がある。に高齢化問題や幼児虐待、ネット炎上・・・様々な社会問題を映し出す群像劇になっている。
なんといっても主演の井端珠里がいい。実に自然体で、監督の愛が感じられる撮り方である(女優のいいところを知っている)。格段に美しい。やはり映画は女優が美しく撮られなければならない。
本シリーズには、「10分に一度の濡れ場」という製作ルールがあるが、前2作は"愛のかたち"をテーマとしているため、"愛"="カラミ"という直接的な行為を描かざるを得ない。ところが、"そこかしこで演(ヤ)る"というのはいかにも不自然である。あきらかに人気(ひとけ)のない場所での撮影は、AVと近似してしまう。
本作が秀逸なのは設定を"デリヘル"にしてしまったこと。客の指定する場所に無理がなく、ロケーションフリーなのである。またデリヘルの店長として、TEAM NACSの音尾琢真が出てくるが、同時進行する複数のストーリーの元締めとして重要なポジションになっている。実にうまい。
セリフがアフレコでリップシンクが微妙にズレているのは愛嬌。
(2017/1/19 /新宿武蔵野館/シネスコ)
蜘蛛の子を散らす
ロマンポルノの制約上とはいえ、やはり70分程の上映時間だとどうしても中身が深く切り込めないのは仕方がない。それに不必要な濡れ場も又、今作品は足枷になってしまっているのではないだろうか。
監督作品の『凶悪』のあの重々しい世界観を期待したのだが。
ただ、もう一つの救いようのない不条理みたいなものはベースとして感じられたので、そこは救いである。
3人のデリヘル嬢の群像劇なのだが、それぞれの女達の物語も又色々な問題が孕んでいてそれが並行に提議されているものだから、一体どれを主眼にすればいいのだか迷ってしまい、却ってそれが一種の軽さを醸し出しているのは勿体ない気がする。
高齢化問題、幼児虐待、引きこもり、貧富の差、etcと、現代日本の負の現場を映し出しているのだが、何かもっと絞り込めなかったのだろうかと思うのは自分だけ?
お爺さんの首を絞めながらの女性上位の腰のグラインドは、女優魂がビシビシ伝わったので、その方に一等賞を(汗
あ、あと、とろサーモンの村田氏のふてぶてしい役柄は、中々様になっていてチンピラ芸人っぷりが堂に入っていたのを忘れないでおこう。
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