「女優を美しく撮るための秀逸な設定」牝猫たち Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
女優を美しく撮るための秀逸な設定
個人的な本命、白石和彌監督の登場である。
ロマンポルノはあきらかに"成人映画"であった反面、当時の日活の経営状況の問題もあって、"裸さえ出てくれば、どんな作品でもOK"という実験場でもあった。せっかくロマンポルノをリブートするのに、単なるエロさを求めるなら、もっと他の手段がある世の中である。
その点、社会派・白石監督が作る"ロマンポルノ"は俄然、楽しみになってくるわけである。
夜の池袋が舞台。3人のデリヘルで働く女性を描く作品。彼女たちは毎日、オトコたちに呼び出されるわけだが、オトコたちにも事情があり、彼女たちにも悩める生活がある。に高齢化問題や幼児虐待、ネット炎上・・・様々な社会問題を映し出す群像劇になっている。
なんといっても主演の井端珠里がいい。実に自然体で、監督の愛が感じられる撮り方である(女優のいいところを知っている)。格段に美しい。やはり映画は女優が美しく撮られなければならない。
本シリーズには、「10分に一度の濡れ場」という製作ルールがあるが、前2作は"愛のかたち"をテーマとしているため、"愛"="カラミ"という直接的な行為を描かざるを得ない。ところが、"そこかしこで演(ヤ)る"というのはいかにも不自然である。あきらかに人気(ひとけ)のない場所での撮影は、AVと近似してしまう。
本作が秀逸なのは設定を"デリヘル"にしてしまったこと。客の指定する場所に無理がなく、ロケーションフリーなのである。またデリヘルの店長として、TEAM NACSの音尾琢真が出てくるが、同時進行する複数のストーリーの元締めとして重要なポジションになっている。実にうまい。
セリフがアフレコでリップシンクが微妙にズレているのは愛嬌。
(2017/1/19 /新宿武蔵野館/シネスコ)