「三味線の弦は3本」KUBO クボ 二本の弦の秘密 オイラさんの映画レビュー(感想・評価)
三味線の弦は3本
あれれ?ストップモーションアニメじゃなかったっけ?CG?と思ってしまうほど…
うん今でも信じられないほど、キャラクターの動きが滑らかでダイナミックで、その精巧さ・美しさに驚愕だわよ。
キャラクター以外にも、襲いかかる大波、舞う紅葉、盆踊りの夕暮れなどなど…背景それぞれの表情や迫力に圧倒されて、言葉を失った。
そのかわり、溜め息だったり息を飲んだり身震いしたり、心身は大忙しだったけどね。
特に精霊流しのシーン。
魂の確かなエネルギーが語りかけてくるような、あの灯の温かさったら…ふゎっと胸に染み入ってきた。
そして、周囲に溢れるその温かさ故に浮き彫りにされる、クボの孤独。
『せめて魂だけでも…父ちゃん!なんで現れてあげないんだよ!』
『賢くて勇敢なクボだけど、彼はまだ子供なんだよ。一人にしないでよ…』って
オイラまで苛立ちと堪らない寂しさでいっぱいになった。
…と、そこに追い打ち。
父親に母親のことを相談したい一心でとったその行動が原因で、
クボは叔母である闇の姉妹に見つかってしまい…目の前で母親を殺されてしまうんだ。
本当に天涯孤独になっちゃったんだよ。
父ちゃんを恨む気持ちが止まないオイラ。
だけどクボはそんなことを思うより、前に進むんだ。
両親を奪ったうえにクボの命までつけ狙う、すべての悲しみの根元である祖父『月の帝』と闘うため三種の武具を探す旅に出るの。
道中を共にするのは、
母親の遺志を継いだ『サル』と、呪いで記憶を失いながらも、勇士であったクボの父親を尊敬する気持ちを持ち続ける『クワガタ』。
性格はてんでんバラバラな3人がてんやわんやしながら、でも互いに命をかけて助け合いながら、同じ目的に向かって突き進んでいく姿が、逞しくて温かくてココロが震えたよ。
なにより2人といるクボが見せる、素直さ無邪気さが可愛くて、それが嬉しくて泣けた。
3人で食事をするシーンでは、不思議なあったかい涙がただ溢れた。
それが何故なのか理由はあとでわかった。
精霊流しに現れられなかった父ちゃんを責めた自分を恥じて、また泣けた。
クボの『目』に執着する月の帝の真の意図は、ホントのところよくわからなかったな。
唯一わかったのは、歪んでこそいても『クボを孫・家族として受け入れたい』との思いはあるってコトだけ。
…それもオイラにはイマイチ『ん〜?』だったけど。
ラストの月の帝との対峙。
母親から聞かされ、自分が多くの村人に語って聞かせてきた半蔵の物語と重なる壮絶な闘いの中で、
『家族とは殺しあうものであってはいけないんだ』と、クボは改めて気付いたのかもしれない。
ううん…実の祖父を恨んだまま生き続けるなんて選択は、最初から彼にはなかったのかもしれないね。
最後には武具を脱ぎ捨て、三味線に込めた魂を月の帝にぶつけたんだ!
初めて精霊流しの場を訪れた時に感じた絶望や恐怖ではなく、大きく広く深く『愛』を抱いているクボが、そこには居たよ。
愛のあるところに赦しは生まれるんだね。
そう、三味線の弦は3本。
その弦はもう切れることはないね。