「テーマが理解されていない秀作NO1。」手紙は憶えている さぽしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
テーマが理解されていない秀作NO1。
今まで"テーマが理解されていない秀作ランキング"1位は
"グリーン・マイル"でした。
しかし本作が、1位となります!
『手紙は憶えている(2015)』
原題 Remember
※あ、ネタバレとかそんな映画ではないと思いますが、後半、核心部分に触れます。本作をラストびっくりドンデン返し映画かしら?と思われる方は、閲覧注意です。
(あらすじ)
90歳。認知が進み、妻の死も忘れてしまうゼブ(クリストファー・プラマー)に、友人マックス(マーティン・ランドー)が手紙を一通渡す。
そこには、最愛の妻が亡くなったら、アウシュビッツで殺されたゼブの家族の復讐をやるぞ。と、いうゼブの決意が記されていました。
時に曖昧になる自分の記憶が心配になり、大事なことを記してマックスに託していたらしい。
相手はルディ・コランダーと言い、身分を隠して生きている。
容疑者は4人に絞られており、ゼブは手紙を頼りに復讐の旅に出るのだった……。
またまた自分語りすみません!
日本の作家で、ラストが全く読めない小説を書くのは都筑道夫せんせだけだと思っています(当社比)。
私は小学校から高校にかけて、都筑道夫せんせの"悪夢図鑑""悪意辞典"シリーズといった、かなりブラックなショートショート集を読んで育ちました。
私の頭の半分は、横溝正史せんせ。
あと半分は、都筑道夫せんせによって形成されていると言っても過言ではありません。
なので、本作もあらすじ読んで、ラストはピーンときました。
これだけ登場人物が少ないのですから、ミステリー童貞でない限りだいたい分かると思います。
映画でも"記憶が保てない系"の作品は色々とあるので、やっぱミステリー童貞でない限りだいたい分かると思いますよ-。
そこを敢えて捻ってこないのは、他に言いたいことがあるからだと思われます。
だって原題がRememberですもの。
記憶する(憶える)とか、過去のことを思い出すという意味ですもの
ただ、ゼブは寝ると記憶を失うのですが、電車の中で移動中、入浴中に、おじいちゃんがうとうと……、ここはどこだ!?
読んでた手紙の上にウエイトレスが飲み物をこぼす!おじいちゃんが激しく動揺!など、違った意味でハラハラいたします。
そこはミステリーではなく、サスペンスっす。
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(以下、ネタバレ)
上にも書きましたが、原題がRemember。
主役のおじいちゃんは90歳で、過去のことを思い出そうにも、認知症などでかなり厳しい状態。
思い出せないどころか、記憶を都合良く作り替えている。
嘘の自分を演じるあまり、嘘を現実のこととして信じ込んでしまう。
そうなんですよ。
戦後70年を過ぎた今、戦争を記憶している方達が亡くなったり、ご存命であってもかなり高齢で、あの戦争が本当の意味で、忘れ去られようとしている。
忘れるならまだしも、史実が歪められて後生に伝わる可能性がある。
"ヒトラーの忘れもの"でも書きましたが、そんな状態の中で、私達は対戦国とどのように関わっていくのか。
当事者でもなく、どれが正しい記憶か分からない状態の中で、悲しい歴史を背負って、どう接していくべきか。
隣国との関係など、特に。
深く考えさせられる内容でした。
ラスト、困惑した顔の子供達、その孫の姿に、自分自身を重ねました。
あと、"ヒトラーの忘れもの"や本作、"さよなら、アドルフ"などにみられる、戦後ドイツ人がどのように生きたのか。
ユダヤ人側から描いた映画とは違った戦争が見えてくるのも、興味深いです。
何より私は、ゼフの元同僚の台詞である「なんで忘れられたんだ?」に衝撃を受けました。
自分に突きつけられてる気がして。
なので正直、マックスの説明要らないっす。あそこ、無粋。
でもベラ・ルゴシ(エド・ウッドの時の役名)を観られて良かった!
いつまでもお元気で!
日本人だからこそ、観て欲しい作品でした。
ぜひ。