うさぎ追いし 山極勝三郎物語のレビュー・感想・評価
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幻のノーベル賞学者
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近代日本医学の父として知られる北里柴三郎博士や野口英世さんらと比べると山極勝三郎さんは余り知られていないでしょう、コールタールを兎の耳に只管、塗って癌を発生させる生体実験の業績については本作で初めて知りました。
先生は助手の市川厚一と共に、3年以上に渡って反復実験を行い、1915年に人工癌の発生に成功し世界の注目を集めたのですが、日本人初のノーベル賞を逃してしまいます。
当時の選考委員は山極氏の業績は既に知られていた煙突清掃員や放射線科医に職業癌が多いという事実を追認したに過ぎず、癌の起源に関しては新規性に欠けると評価したそうです。
山極氏に先駆けて、デンマークのヨハネス・フィビゲルが寄生虫による人工癌発生に成功したとされノーベル生理学・医学賞が与えられました。
後年(1952年)になってアメリカの学者によりフィビゲルの実験に誤りがあったことが証明されており初の発癌実験としては山極氏の業績が正しかったことが明らかになりました、幻のノーベル賞学者といわれる所以でしょう。
映画化の意義は分かりましたが、演じるのが遠藤憲一さん、熱演ではありましたが個性が勝ちすぎて研究者には見えかねる印象、実験動物の兎にちなんでのタイトルなのでしょうが痛ましく、これまたしっくりきません。
製作陣としては地味なドキュメンタリー化を避けヒューマンドラマを狙ったのでしょう、陰で支える女性陣の見事さはジーンときましたが、なぜ正露丸で黒兎を思い立ったのかは作りすぎでしょう。
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