「ドゥニ・ビルヌーブ監督の映画らしく、人間、レプリカント、AIの壁を超えた様々なかたちの愛を描いていた」ブレードランナー 2049 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
ドゥニ・ビルヌーブ監督の映画らしく、人間、レプリカント、AIの壁を超えた様々なかたちの愛を描いていた
ドゥニ・ビルヌーブ 監督(「メッセージ」等)による2017年製作(163分、PG12)のアメリカ映画。原題:Blade Runner 2049、配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント。
吹き替え版を視聴。
製作総指揮リドリー・スコットの下、前作の世界観を踏襲しながら、新しいAI的な要素(バーチャル彼女、3Dホログラム等)も取り入れて、人工レプリカントの進化や悲哀を突きつけて来て、流石ビルヌーブ 監督の作品という印象。
主人公ライアン・ゴスリングが人間ではなく、私企業によって製造されたレプリカントの警察官Kというのが、前作より一歩進んでいて未来的。恋人は、汎用的市販品らしいAIバーチャル彼女のジョイ。彼氏のお好みに合わせてか衣装も自由自在で、会話だけでなく食事も用意してくれる。演じているのがキューバ出身のアナ・デ・アルマス(007 ノー・タイム・トゥ・ダイ等)で、めちゃ可愛いく一途な感じが何とも魅了的だった。
肉体が無いAIアルマスは、人間の女性(マッケンジー・デイビス)の体を借りて彼女とシンクロする形で、大好きなゴスリングとセックスして思いを遂げる。彼女の気持ちはとてもいじらしいのだが、少し考えてみれば、0と1しかないプログラムから出来てるAIが肉体関係を求めるという何だか恐ろしい話でもある。感情というものが未だ理詰めでは分からないだけに、AIが愛する気持ちを有していてもおかしくないと思ってしまう。
主人公レプリカントのゴスリングは重傷を負っているのに関わらず、父親(ハリソン・フォード)を娘(カーラ・ジュリ)に合わせようと動いた。生身の人間ではなくレプリカントに本物のヒューマニズムを表現させるのが、何とも味わい深く感じられた。
レプリカント製作会社社長ウォレスの代理人レプリカントのラブ(シルビア・フークス:志田有彩)はゴスリングと闘い、ナイフで重傷を負わすのだが、勝利を確信した時にゴスリングにキスをする。湧き上がってきた勝利の歓喜的感情と恋情がconfusion してしまったのか?ココは正直、良く分からなかった。
デッカード(ハリソン・フォード)は人間と思って前作では見ていたのだが、本映画では放射能汚染されたラスベガスのホテルに、黒いイヌのレプリカント(寿命とウイスキー好きから考慮すると)と一緒に30年暮らしている訳で、また過去の記憶への拘りも強く、どうやらレプリカント設定なのかなとは思ってしまった。
とすると、レイチェル(ショーン・ヤング、昔の若いままの容姿での再登場させる映像技術には驚かされた)との娘は、レプリカント同士の子供ということになる。2人とも先を見据えて製造された繁殖能力授与型のレプリカントだったということだろうか。レプリカント達が奇跡と言っていた意味も、よく理解できる。また、リアルな世界で、ロボットやAIが自己増殖できる様になったら、人間の立場はとてもヤバイなと恐怖心の様な感情を覚えた。
映画全体を通して、人間、レプリカント、AIの壁を超えた様々なかたちの愛を描いていた印象で、リドリー・スコットではなく、ドゥニ・ビルヌーブ監督の映画らしいと感じた。
監督ドゥニ・ビルヌーブ、製作アンドリュー・A・コソーブ 、ブロデリック・ジョンソン 、バッド・ヨーキン 、シンシア・サイクス・ヨーキン、製作総指揮リドリー・スコット、 ビル・カラッロ 、ティム・ギャンブル 、フランク・ギストラ 、イェール・バディック 、バル・ヒル。原作フィリップ・K・ディック、原案ハンプトン・ファンチャー脚本ハンプトン・ファンチャー 、マイケル・グリーン、撮影ロジャー・ディーキンス、美術デニス・ガスナー、衣装レネー・エイプリル、音楽ベンジャミン・ウォルフィッシュ 、ハンス・ジマー、
音楽監修デバ・アンダーソン、視覚効果監修ジョン・ネルソン。
出演
ライアン・ゴズリングK(加瀬康之)、ハリソン・フォードリック・デッカード(磯部勉)、アナ・デ・アルマスジョイ(小林沙苗)、シルビア・フークスラヴ(志田有彩)、ロビン・ライトジョシ(深見梨加)、マッケンジー・デイビスマリエッティ(行成とあ)、カーラ・ジュリアナ・ステライン(恒松あゆみ)、レニー・ジェームズミスター・コットン、デイブ・バウティスタサッパー・モートン、ジャレッド・レトニアンダー・ウォレス、エドワード・ジェームズ・オルモスガフ、ショーン・ヤングレイチェル、バーカッド・アブディ、ヒアム・アッバス、ウッド・ハリス、デビッド・ダストマルチャン。