「強さを持つこと…優しさに触れること…生きる事の難しさ…」幸せなひとりぼっち もしゃさんの映画レビュー(感想・評価)
強さを持つこと…優しさに触れること…生きる事の難しさ…
いろんなレビューに書いてあるとおり、偏屈な老人が引っ越してきた一家との触れ合いの中で、閉ざした心を開いていくヒューマンドラマ…なのですが、本当に深くて、笑えて…悲しい映画でした。
早くから母を亡くし、無口で昔気質の父の愛で育った青年は、父をも失い、父にもらった形見の時計を守るため、自分を信じて闘う決意をし、父の残した家に住み続ける。
それから数十年が経ち、唯一の理解者であり光であった妻を亡くし、生きる希望を失った老人が、相変わらず自他共に厳しく、規律を守り、住宅地を勝手に管理しながら、妻を追いかけ自殺を試みたが、隣人に引っ越してきたのは、ポジティブで外連味無く誰とでも平等に接する家庭の妻だった。
こんな偏屈なおじいさんに何故にそんなに構うのか…?という疑問も最初はもったものの、本当に誰にも明るく接して、裏が全く感じられない人ってたまにいますよね。
そんな姿は、おそらく亡くした妻ソーニャがもっていたもの。
その無垢で誰にも屈託がなく、未来を信じる姿にオーべが両親以外で唯一本当に心を開いたのがソーニャだということが嫌というほどわかるエピソードが盛りだくさん。
家も失い、自分しか信じられるものがなくなってしまったオーべ青年の心を見事に開き、その愛情を注ぎ続けたソーニャが亡くなり、オーべ老人は、他人の正しくないことを厳正にただして、規律を保ち続けることでしか自己の存在意義を見出せなかったのでしょう。
絶望にかられ、愛する妻と後生で会うことを決め、自殺を図るオーべの前に、現れたパルバネ。その屈託のない性格とポジティブな生き方に、オーべも徐々に心を開いていく。
で、些細なことで許せなかった友人と心を通わせはじめ、パルバネの娘達に心を開き、妻の教え子の友人を家に泊めるようになり…順調に周りとの調和を取り戻して、そのことに「人が生きること=一人ではない」ということを感じ始めたラストは…。
人が生きるということは、自分には理解できない他人を排除して、いかに自分というものを保っていくか…孤高の人という生き方もあるものの、そんな生き方ができるのは本当にごく僅か…。孤高と思い込んでも、自分が気持ちを許した人がでた瞬間にその箍が一気にはずれたり、なんだかんだで他人に頼っていたり…いろんなケースはあるものの、オーべに生きる光を与えたソーニャ、その死によって再び閉ざした心を開いたパルバネとの出会いを経て、ようやく気付いた時には…。
人生の残酷さも同時に物語っている気がして…。悲しかったです。
あの世があるなら、幸せな生活の続きを送ると共に、きっと仲間との生活も楽しめるはず。
コミカルな部分もあり、笑いも誘う映画ですが、本当に深くて悲しいお話でした。
>人生の残酷さも同時に物語っている気がして…。悲しかったです。
う~ん,私はあそこまで描いたからこそ,ストーリィ全体に深みが出たという印象を持ちました。つまり,安易な,あるいは中途半端なハッピーエンドにしなかったリアリズム。