「宇宙とお好み焼き」ニワトリ★スター atararuiさんの映画レビュー(感想・評価)
宇宙とお好み焼き
人間とは思えない人間がいる でもこれも人間 こんな残虐な世界があることに目を覆っていたいと思ったけれど 次の日、現実社会でも警察官が刺されたことをニュースが伝えていたし 私自身は手で蚊を叩いて広げた掌にぺしゃんこになった蚊と血が付いていて それが当たり前のように小さな残骸を眺めてしまっていたわけで 殺してるよね···平然と 災いから上手く逃れても思ってもないトコ(病)から刺客は訪れて自分の力ではどうしようもないことは世の中に溢れてる つい最近 父の一周忌があった 思い出すのは何故か幼い頃のことが多く背の高い広い背中をとても頼もしく見上げていた ふとした時に思う もう いないんだと··· 後悔の念でいっぱいだ 「太陽の流す血が夕焼けとなり冷たく死んだ太陽が月になる 」デパートの屋上で たそがれる草太 夕焼けの赤い色が自分の身体の中にも流れていることを感じ共鳴していたのだろう 人間も宇宙の一部なのだから 時として風、山、海、雨や光など自然の中に溶け込んでる自分に気づく 生と死は真逆にある 繋がってる等など言われてるけれど原作を読んで死を内包したまま生きていることを強く感じた そんな風に思ったことなかったのに 絶対に抜け出せないシステムそれが「死」 黒い鶏と化した楽人も月海と太陽にとっては青い鶏(幸せの象徴)であり思い出と共に二人の心の中で羽ばたき続けてる 今はまだこちら側にいて 彼方の宇宙までは行けなくても君がそこ(心の中の投影)にいてくれたらそれでいい そう 楽人はニワトリ星に行ってしまったんだ ニワトリって君が思うよりも 飛べるんだよ 胸に灯した小さな明かりを糧に ★かったものは「希望」なの 如何なる時も人は希望と共にあらんことを ところどころに挿し込まれた風景がクッションとなり重たい場面からふっと解放される 色の持つ力も加わり 若葉と蝉の死骸(抜け殻?) 赤い紅葉 カラフルな傘の数だけある人間模様 言葉でなく視覚的に伝わってくる これは映画ならでは文字ではできない ところどころ印象的に流れるピアノは轟く音との対比でどこまでも優しい アニメを映像に織り込むとリアルな映像だけよりもどんな効果があるのか考えてみました はじめアニメは夢の中の世界で使われていたと思うのですけど仮想現実(映像)の世界でも混ぜて使われると 信じられない程 残酷な場面にオブラートがかかったみたいで仮想現実(映像)と夢の中(アニメ)の狭間にいるような感覚に陥りました ルポルタージュ的としてでなくファンタジーとしてみせることに成功してると思います 神の男は人殺しでありつつも偶然に人を救っているというこの何とも奇妙な出来事 人間の神様って奴はなんてアバウトなんだろう でもこの時 ほんの少しだけ私にはこの殺人鬼が悪魔みたいな人間を成敗しにやって来た神様にも見えてしまったことを声を潜めて言っておきます 夢の中での出来事かと思いたくなるくらい悲惨すぎる場面 生々しい奇怪な世界が確実に存在しているという事実 仮想現実の話だけではない 明日になれば自分が殺人鬼になっている可能性だって捨てきれない 珍しく文庫本を読んでから観たので すんなりと解りやすく物語に入り込めました 秩序が保たれたような世界に暮らしてるけど 少し暗がりを覗き込むとそこには混沌とした世界の闇が広がっていて何も確かなモノは無いし 楽しいことばかりでもないし 信じるモノは何?自分がホンモノなのかも怪しい それでも世界は美しくて きっと人間だって美しく生きられる ホントにそうなのかな? このことについて考えると疑心暗鬼な思いが拭えない 人間らしいとは? 今日も 見上げた青空が眩しい どこか宗教チックなんですけど 人間とはこんなんやでと品ぶった世界に一石投じ 宇宙という壮大なテーマとお好み焼きに乗るくらいの幸せを天秤にかけ釣り合わせてしまった稀有な物語です 追記 2019. 8 .20 衝撃的な場面が強すぎて 草太と楽人の関係性はあまり私には響きませんでした